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道化の国
脱走2


「でも、これからどうするの?花月はどこか行く当てがあるの?」

「ない」


キッパリと断言する花月は、少し楽しそうに笑いながら答える。


「でも……ただフラフラと街を見て回りたいな。今は一人じゃなくて、美咲も一緒だし。わたくしとデートは嫌か?」

「ううん、じゃあそうしよう。……けど、早く帰ろう?白露に心配かけたら悪いよ」

「美咲が言うなら仕方ないな。その代わり、美咲がよく行く場所に案内してくれ」


白露に怒られるのは目に見えていたので、少しでも気分転換になるのであればと思った美咲は快く承諾した。

それから美咲は花月をセンリとよく行くお店を数軒足を運び、他愛もない話をしながら街の散策を楽しんだ。


「花月、そろそろテントに戻った方が良いんじゃない?きっと白露待ってるよ」

「んー……、そうするか。美咲とセンリがどんな場所で遊んでるのかわかって楽しかった。デートかー……わたくしもしてみたいな……」


ポツリと零す花月に美咲は微笑んだ。


「白露とデートしてるんじゃないの?」

「白露とデートなんてした事ない。マスカーレイドの言う、“腰巾着”でしかない。あれは父上や母上のお気に入りでな。わたくしの護衛兼、教育係なだけだ」


ため息を零す花月は何処か寂しそうにしていて。


「わたくしも普通の女として産まれたら、美咲みたいに楽しく過ごせたのかもな」

「花月は楽しくないの?」


花月は少し俯き、小さくかぶりを振った。


「楽しくない……とは思わない。今の生活が嫌いなわけではないのだが、何処か空虚で……、何か物足りなさを感じるんだ。でも、わたくしにもよくわからないんだ」


花月の様に地位のある人物の気持ちは、美咲には計り知れず。
ただポツリポツリと零れる花月の心の吐露を静かに聞いていた。

暫くすると花月も黙ってしまい、シンと静まり返ってしまう。

二人に近付く影がある事に全く気付かずに、ゆったりと
した時の流れだけを美咲達は感じていた。







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