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道化の国
サーカス1


「いいか、絶対に俺の側から離れるなよ」


美咲は素直に頷くが、花月は素知らぬ振りをして街並みを眺めていた。
花月の様子に白露の顔が引きつる。そして花月の頬を両手で力強く包んだ。


「特に花月に言ってるんだがな。お前はどうして俺の言う事を聞こうとしない」


片眉を吊り上げた白露は、真っ直ぐに花月を見る。
怒りを表す白露にやばいと感じた花月は、冷や汗を流しながら素直に返事をした。


「は、はーい。白露の言う事聞きく。聞く聞く」

「妙に言葉を伸ばすんじゃない。無駄に言葉を繰り返すな。馬鹿丸出しだ」


白露の余計な一言が気に入らないが、後で白露を困らせる算段を考えていた花月は大人しくしていた。
ニヤつく口元を、押さえながら。


「美咲、絶対俺の側に居てくれ。もしお前に何かあれば、俺がセンリに殺される」


真面目な顔の白露に美咲は緊張し、何度も素早く頷いた。
素直な美咲に笑みを漏らし、白露は立ち上がった。


「じゃあ行くぞ」


それに続いて美咲と花月も立ち上がり、その場を後にした。
美咲と花月を前に歩かせ、白露が二人を監視する様に後ろを歩いている。


「サーカス久しぶりだな」

「花月はもう何回も見に来たの?」


無邪気な表情で笑う花月に、美咲は覗き込みながら聞いた。


「結構見に来てる。それで、センリ達と知り合ったんだ」

「お前が騒ぎばかり起こすから、仕方なく出会ったと言った方が正しいだろ」


余計な一言とばかりに、花月は白露を振り向いて睨む。
一体どんな騒ぎを起こしたのか……と言いそうになる美咲は、また二人が喧嘩を始めてはと思って口をつぐんだ。

少し歩くと、静かな広い空間に出た。

目の前には大きな円錐状のテントが張られてあり。
しかし、大きいとは言っても数十人くらいしか入らないのでは?といった大きさで、美咲は不思議に思えた。


「こんな大きさの場所で、サーカスがあるの?」


晴れやかな表情で花月は美咲の手を取って真っ直ぐに歩みを進めた。


「見ればわかる。きっと美咲は驚くぞ」

「お前も最初は随分驚いたものな」


揶揄する白露は笑い、花月に早く行けと顎で示唆する。
小馬鹿にされたと思い、花月は顔をしかめて悔しがった。


「後で覚えてろ」

「何か言ったか?」

「何も言ってませんわー」


二人のやり取りをハラハラしながら伺う美咲の気持ちは、誰も気付かない。





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