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道化の国
待ち人来たりて


白露達との待ち合わせ場所に着くと、まだ誰も来ておらず。
近くにあるベンチに腰を下ろし待つことにしたセンリ達。


「花月がまた何か悪さでもしてるのでしょうか」

「そうなの?」

「白露はキチンとした人ですからね、それを乱すのが花月……と言った役割なんですよ。あの方々は」


眉をしかめながら苦笑するセンリに、美咲は思わず笑みを漏らす。


「花月達って面白いよね。あの二人を見てると、なんだか可愛い」

「白露が哀れでなりませんけどね。私は美咲の方が可愛いです、さぁこちらへ」


隣に座っていた美咲の身体を膝の上で横抱きにするセンリ。
急に膝の上に乗せられた美咲は、ドキドキして落ち着かない様子だ。


「やだ、センリ……」


顔を紅くさせる美咲の顔を覗き込み、センリは目を細め小さな肩を抱き寄せた。
ゆっくりと身体を離し、紅潮した頬に掌を宛がう。


「美咲……」


どちらともなく、瞳を閉じ唇を重ね合う。
深い口付けを何度も、息をつかせぬほどに。


「きゃー!」


美咲は悲鳴に驚き、声の主を探した。
そこには花月が顔を紅くして瞳を隠している。

離された唇にセンリは忌々しく思い、花月を横目で睨みつけた。


「花月はまだ子供ですから、他人のキスを見たくらいで悲鳴を上げるんですね」


花月を鼻で笑うようなセンリに、白露はウンウンと小さく頷く。


「だ、だって……、美咲は恥かしくないのか?」

「照れるけど……センリと離れるのは私も辛いから、こうして一緒に居れるのが嬉しいから」


顔を緩ませセンリを見る美咲の瞳は輝いていて、センリは心が締め付けられる。


「美咲は……いつも私が欲しい言葉を、言ってくれますね」


再度唇を重ねるセンリに花月は悲鳴を上げそうになるが、白露の手に押さえつけられていた。

白露達の前で、繰り返される熱いキス。
美咲の視界には、センリしか見えないでした。


それからセンリは名残惜しそうに美咲の髪を一筋掬い、サラサラと指の隙間から零れ落とす。


「私は準備がありますから、先に行きます。白露、美咲の事、お願いしますね」


大きく深呼吸をして美咲の肩を抱き、白露の面前に差し出す。


「あぁ、わかった」

「良いですか?白露の側から絶対に離れてはいけませんよ」

「うん大丈夫、心配しないで。センリいってらっしゃい」


今生の別れの様に、センリは美咲を強く抱きしめ、優しく唇を重ねた。









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あきゅろす。
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