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道化の国
手紙


(最近コソコソと、何かしてますね・・・。)


「美咲。」

「きゃあ!!セ、センリ何か用?」


不意に声をかけられ、ガサガサっとテーブルにあった紙を、俯せた美咲の身体で隠す。


(便箋・・・、ですか。)


「何でもありません。」


センリはクスリと笑みを漏らし、テーブルに這いつくばりながら、自分に顔を向ける美咲の髪を優しく梳く。


「わっ私、ちょっとリビングに行ってくるね。」


紙を胸に隠すように抱きしめ、そそくさとベッドルームから出て行く美咲をセンリは見送る。


(怪しいですね、私に見られては困る物なのでしょうか?)


少し寂しい気持ちになるセンリは、美咲に何も聞けないでいた。


(しかし、私に隠し事ですか・・・。気に入りませんね。)


何かを企み、クスクスと怪しく微笑むセンリ。



その頃、何も知らない美咲は、リビングで紙とペンと格闘中―――。





危ない・・・、センリにバレるところだった・・・。


いつもいつも私を大切に思ってくれるセンリに、私からのささやかな贈り物。

何をやれば良いかわからない私は、手紙を書く事にした。


なぜなら――。


以前センリに、欲しい物があるか聞いてみた。


「欲しい物ですか?私はもう手に入れてますから、何も必要な物はありません。」


――と、サラリと言われたから。


悩んだ挙句、物を贈っても喜びそうもないセンリには、私の気持ちをつづった手紙を贈る事にした。


たくさんの愛の言葉を、文字にしたためて。



書き終えた美咲は、達成感と安堵からウトウトとし始める。

夢に見るのは、微笑みを湛えたセンリで。
幸せそうな顔をしながら美咲は、眠りの世界に漂い始めた。



センリが静かにリビングの扉を開ければ、眠る美咲が居て。

横たえた頭の先には、何かが書かれた便箋が一枚。

眠る美咲を見てクスリと笑みを零すセンリは、ソッと便箋を覗き込む。


「勝手に見るのは悪いですが・・・。――これは。」


美咲の愛の言葉が書き連ねてある、一枚の恋文で。

自分のために、したためられた物だと知り、嬉しさで熱が込み上げて来るセンリは、緩む口元を押さえる。


「とんだサプライズですね。」


夢見心地のセンリは、今すぐにでも美咲を抱きしめたい衝動に駆られるが、気持ちよく眠る美咲の邪魔をしたくなく、グッと自分を抑えた。

美咲に想われていると実感するセンリは、心が高鳴り歓喜のあまり恍惚の表情でいる。

眠る美咲に優しく触れ、溢れる思いを呟く。


「貴女は、ずっと側に居てくれますか?」



私の我儘で、美咲から自由を取り上げるような事ばかりしています。


しかし、いつも笑って隣りに居てくれる。
それも・・・、こんな手紙まで書いてくれてたとは。

貴女に想われていると、思って良いのですか?

自惚れではなく。
想いを形にしたこの文字は、私を想ってくれた証ですよね?



今なら言える・・・。


貴女は、ずっと側に居てくれますか?




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