ゆっくりと瞳を開ければ、バスローブの隙間から覗く胸元や、濡れてシットリとした艶やかな黒髪。
整った端正な顔には水滴が輝き、優しく微笑みながら、黒い瞳が細められている。
「私の身体、美咲は嫌いですか?」
耳元では甘いテノールが奏でられ、美咲を揺さぶる。
正面を向かされ、優しく抱き締められれば、妖しくも濃密なセンリの香りが美咲の鼻腔を犯すように容赦なく入り込む。
香りに翻弄される美咲は身体の力が抜け、ズルリと膝が落ちてゆく。
咄嗟にセンリの腕に力が込められ、美咲の身体が支えられた。
紅潮し瞳を潤ます美咲と、それを愛しげに見つめるセンリの視線が絡まる。
「本当に美咲は敏感ですね。私の身体を見ただけで、欲情するなんて嬉しいですよ」
「やだ……違う……」
力なくかぶりを振り、湛えられた涙が零れ落ちそうになる。
そんな美咲を見下ろしていたセンリは、腰を屈めて涙腺に溜まる雫を舐め上げた。
香りに酔わされた美咲は触れた舌に反応し、紅く濡れた唇から喘ぐ声を漏らす。
美咲の耳元で、センリの声が低く静かに響く。
「ベッドに行きますか?」
すでに喋れない美咲は素直に頷いた。
息遣いを荒くする美咲をセンリは軽々と抱き上げ、ベッドルームに入って行った。
軋むベッドに優しく下ろされ、美咲はハッと気付く。
「私もシャワー……浴びたい」
ベッドに膝立ちして美咲を跨ぐようにしているセンリは、不思議そうに首を傾げ微笑んだ。
「なぜですか?」
「だって、汗かいちゃったし……、今ので……」
語尾を小さくして誤魔化す様を、センリはほくそ笑んで聞いた。