すぐに軽やかな足音が近付くと、ゆっくりと薄く扉が開いた。その僅かな隙間から真っ黒なバスローブが差し出される。
「はい、バスローブ……」
「美咲……。それでは届きませんよ、中に入ってください」
「でも……」
「風邪をひいてしまいますよ」
扉の前で考えあぐねいている美咲は、センリが風邪をひいてはと思い、視線を逸らしながらオズオズと入って行った。
「……はい」
「うっかりしてました。ありがとうございます」
美咲の持つバスローブを受け取ると、すぐに羽織った。
センリが羽織るのと同時に、美咲はバスルームを後にしようと後ろを振り返った。
「何処に行くんですか?」
「キャッ」
美咲の背後からセンリの左腕が腰を巻き取り、抱きすくめられる。
センリからはボディソープのほのかな香が漂い、バスローブの隙間から零れる素肌が美咲の頭と触れ合う。
「すぐに逃げる様な事、しなくても良いでしょう?」
悪戯に笑い、空いてる右手を美咲の顎に添える。
美咲の顔を後ろに向けさせ、センリは唇を重ねた。
「私の裸を見るのは、そんなに恥ずかしいですか?」
美咲はセンリから視線を外し、頬を紅くしたまま小さく何度も頷いた。
「いつも見てるでしょう」
今度は黙って大きくかぶりを振り始める美咲に、センリは笑い声を漏らす。
「じゃあもっと見てください。私の身体も、貴女のモノなんですよ?」
いまだかぶりを振るのを止めない美咲の頬を、センリは両手で包み込む。
「い、いい!遠慮します!」
美咲は瞳を閉じ、顔の前で両手を振る。
「どうしてですか?」
「どうしてって……」