「もうこの話は止めましょう。折角マリカが招待してくれたパーティーです。楽しみましょう……、でもお酒は駄目ですからね」
「……わ、わかってる。もう飲みません」
以前センリとお酒を楽しんだ際に美咲は初めてのお酒で少々暴れてしまったため、それ以来センリに禁酒と言われていた。
そんな失態を二度としないと思っているからこそ、美咲はセンリに言われなくてもお酒を飲むつもりはなかった。
センリは苦笑いを浮かべ、一軒の店の前で立ち止まる。
辿りついた場所は、重そうな木の扉のお店。
招待されたのはマリカ主催のダイニングバーでのパーティー。
美咲と縁のある人ばかりマリカの友人から集め、酒宴を催すからと招待状が届いた。
酒宴と聞いてセンリは少し嫌そうにするが、何より美咲が行く気満々になったので、仕方なく出席する事となった。
「マリカの友達に会うの初めてだから、とても楽しみ」
綻ぶような笑みで美咲は、センリの顔を見上げる。
「マリカなりに美咲に楽しんでもらいたいんですよ。思い切り楽しんでくださいね」
センリは微笑み、美咲の髪に唇を落とした。
「センリも一緒に楽しもう、……でも私の側に居てね」
「私は美咲が居れば、いつでも楽しいですよ。それに側を離れろと言われても、離れません」
少し意地悪そうに笑うセンリに、美咲はドキドキと胸が高鳴る。
店の扉を開けてセンリがエスコートし、美咲が店の中に入った。
小さなお店だがシンプルな調度品が点在し、木の温もりが感じられる。
5つあるテーブルには煌々とランプの灯りが灯され、様々な料理が並べられていた。
10人ほどの人が楽しく談笑をしている中に、マリカの姿を見つけた美咲。初めて来た場所で、慣れない人達の中から知った顔を見つけた美咲から思わず笑顔が溢れる。
「マリカ!」
自分を呼ぶ声に気が付き、マリカは辺りを見回す。
声の主が美咲とわかると、にこやかな笑顔で美咲を迎い入れた。
「いらっしゃい、美咲。センリもよく来たわね」
ニヤニヤと笑うマリカに、センリは心の内を見透かされてしまっているのだと苦笑いをしながら頷いた。
「美咲がとても楽しみにしていましたから」
「へぇ……、ふふっ。美咲楽しんでね。美咲に縁のある人達ばかりよ、それに信用出来る奴等ばかりだから安心してね」
最後の一言は間違いなくセンリに向けられたもので。
それに気付いたセンリは掠めるようにマリカを一瞥した。