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道化の国
希望の光とは2


「美咲は希望の光、これは覆らない真実。そしてその光は、途方もない時の流れの中で暇を持て余した他の住人さえも癒してくれます。だから貴女へ向けられていたのは、羨望の眼差しです」

「羨望?」

「随分美咲の噂が広がって来たようですね。リアンの一件で……派手に騒いでしまいましたから」

「でも見られてた理由がわかったから、もう気にしない」


センリは抱き寄せていた腕をソッと離し、美咲の髪を梳く。
そこには心配そうな表情のセンリがいて、美咲はどうしたのかと顔をしかめた。
センリから告げられる言葉は、美咲にとっては初めての事が多い。しかも自分の事を教えてくれているのだとわかるから、表情は真剣だ。


「誰しもが自分の光が欲しいのです。本当は自分の希望の光が一番なのですが、他人の光でも……欲しくなる物なんです。だから……」


言い渋るようなセンリに不安が過る。


「……だから、美咲を側に置いておきたい。隙あらば自分の物にしたいと狙ってくる輩が出て来ると思います」

「え……それじゃあ……私」

「今までとは違います。ユーマは私に執着していたためで、リアンも同様です。しかし、これからは美咲を純粋に狙った輩が現われると思います」


表情を曇らせる美咲に、それを払拭させるセンリの瞳。
合わせられた視線は、美咲の沈んだ気持ちを掬い上げるかのようだ。


「今まで以上に、気を引き締めなければなりません」

「センリ……」


囁かれる言葉に、センリの袖口を握った。
力のこもる美咲の手を、センリは優しく解きほぐすように指を絡める。


「現段階で美咲が信用出来る人は、私以外で誰ですか?」

「マリカ、マスカーレイド、ユーマ……かな」

「マスカーレイドとユーマはどうかと思いますが、美咲が言うなら信用しましょう。美咲を守る人を、増やさねばなりませんから。私一人で守りきる事が出来るか心配ですので」


不本意な口調のセンリだが、背に腹は替えられず。


「でも今までもセンリが守ってくれたわ、だから大丈夫なんじゃ……」

「いいえ、例え1%でも自信がなければ安心は出来ません。その穴を埋めるには協力してもらわなければいけませんから、マスカーレイド達頼んでおくにこしたことはありません。美咲を失う事に比べたら……」


二人は静かに見つめ合い、センリの腕が美咲の肩をソッと抱き寄せた。


「それに私は……美咲を守りきれていません。リアンの時は貴女に怖い思いをさせてしまいました」


悲痛な顔をするセンリに、美咲は眉尻を下げて大きくかぶりを振った。


「違う!あの時は私が悪かったから……。センリの言った事守らなかったから。ね、前もそう言ったじゃない。だから自分を責めるのは、……止めて」




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