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道化の国
見透かされる心



センリが横切ると、フワリと漂う。


甘い香―――。


他の人には感じない。

私が感じられる、私だけの香。


センリの綺麗な横顔が過ぎり(よぎり)、思わず目で追ってしまう。


引付けられる、魅惑的な顔・・。

センリの瞳は黒曜石の様に、黒く光り。

その瞳に見つめられると、心ごと身体を縛り付けられてしまう。

そして身動きが取れなくなり、ドキドキと心臓が高鳴る。

痺れる様な甘さが身体中を駆け巡り、蕩けてしまう―――。


「何ですか、さっきから私を見て・・・。穴が空いてしまいますよ。」

「やだ、ごめん・・。」


食い入る様にセンリを見つめていた美咲は、それを悟られ、恥かしさで顔が火照る。

クスリと微笑むセンリは、持っていた本を棚へ戻し、美咲のもとへ歩みを進めた。


「私を見て、何を思っていたのですか?」


伸ばされた手は、美咲の後ろ頭に添えられ、腰にも手を回し抱き寄せる。

唇が触れ合うくらいに、顔を近付け・・・。


「美咲、何を思っていたんですか?」


隙間なく密着した身体から、美咲の鼓動がセンリに伝わる。


「どうしたんですか。とてもドキドキしてますよ?」


美咲から顔を少し離し、センリは妖艶に微笑む。

見透かす様に笑うセンリに、美咲は顔を紅く染め上げるしか出来ず・・。


「貴女の心の中、覗いてみたいですね。」


優しく髪を梳きながら、センリは耳元で囁く。


「セン・・・ん・・。」




全てを見られてるみたいに、貴方の瞳は語っている。


貴方が好きで仕方ないって事を知っているから、貴方は優しいキスを、私に落としてくれるんでしょ?


どっちの気持ちの方が大きいかは、わからないけど。


きっと同じくらいの気持ち、なんだよね?


センリ・・・。





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あきゅろす。
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