「ね、センリ」 「どうしましたか?」 苦笑いを浮かべ少し疲れた表情の美咲に、センリが訝しげに覗き込む。 「このところ、とても出会いがあるみたいで。……色々な人が見えるの」 「……困りましたね」 今まで見えなかった物が見えるようになった事は、美咲にとってはあまり嬉しい事ではなかった。 不安や恐怖が入り混じった、不安定な気持ちが胸を掠める。 希望の光とは少なからずとも、他の住人にとっても羨望の的であり、自分もその光に触れたいと思うようになる。 それ程に貴重な存在だと、センリから幾度となく説明を受けていたから。 だからこそ、センリは美咲に縁のある人に会いたくないと思っていた。 自分の大事な光が、他人の瞳に触れられるだけで、美咲が穢れると思うくらいだから。 センリはこの時が来たかと、大きくため息をついた。 「その人達を見ると必ず瞳が合うのよね……。ジロジロ見られる程、私どこかおかしいなかな?」 自分の服装や髪型を確認し始めてた、美咲の動きが止まる。 「ヘアメイクも服のコーディネートも、全部センリがしてくれてるから変じゃない……私わかるもの。じゃあなんで?まさか私の顔が……」 「違います」 オロオロする美咲が面白くも可愛くもあったが、不意に出た言葉にセンリが強い語気で遮った。 「美咲は私の大事な可愛い人。貴女を卑下するような発言はしないでもらいたいですね。そんな事もわからないのでしたら、私が身体を張って美咲に教えても良いんですよ?」 怪しく口の端を上げるセンリは美咲の頬に指を滑らせた。 「でも、会う人会う人にジロジロ見られるのは……なぜ?」 美咲に全てをいきなり教えて怖がったり不安がったりさせたくないセンリは、この国の事、希望の光の事を小出しにしか教えていない。 しかし、この話はまだしておらず先延ばしにしておきたかった話でもあったから。 センリは大きくため息をつき、美咲の額に唇を落として抱き締めた。 |