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道化の国
マリカ



その地に一歩踏み入ると、広がる高い天井には空の絵が描かれている。

暗褐色の街並みに、天井の空だけが色鮮やかな青。


「空……?」


何処か閉鎖的な空間に不釣り合いなまでの鮮やかな色彩に、女は不思議な気持ちで天井を眺めていた。

誰も居ないのか、静かな街並みに女の足音だけが響く。

辺りを窺っていた女は歩みを止め、近寄ってくる一人の女性を目で追った。


「こんにちは、貴女は何処から来たのかしら?」


女の顔をまじまじと見つめている長身の女性は、腰を僅かに曲げて顔を覗き込んだ。


「気付いたら此処に……」

「そうなの?」


褐色で健康そうな肌が美しい長身の女性は、腰まである長い髪を靡かせる。

硝子細工の髪飾りをたくさん付けていて、少し動くたび澄んだ音色を響かせた。


「髪飾り……綺麗、すごく似合います」

「あら、ありがとう。私も気に入っているのよ」


気分を良くした長身の女性は女に破顔し、頭を撫で回してみせた。
大人の女性を思わせる強い表情に似つかわしくない愛くるしさが、女を緊張から解き放つ。

あまりの美しさと可愛らしさに、言葉が出ないでいると女性はまた表情を変えた。


「他の誰かにも会えるかもしれないわ。私は貴女と縁があったみたいね、名前教えて?」

「は……い、美咲です」

「そう美咲って言うの、よろしくね。私はマリカ、じゃあまたね。私達、また出逢えるわ」


マリカは軽やかに髪飾りを鳴らし、建物の隙間を縫うように奥へと行ってしまった。




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あきゅろす。
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