理屈



苦しんでいる人がいた。

その人は遠い昔、ある田舎道に倒れていた。

息が出来ないと、声にもならない声でその場にいた人に助けを求めた。

男の子はそれを見ると助けを呼びに全速力で駆け出した。

暫くすると男の子は息を切らしながら大勢の大人を連れて戻ってきた。

大人達は倒れている人と自分達との、“色”の違いを指摘した。

「他国の者なんて放っておけばいい」

そうして男の子の手を引いて倒れていた違う人をそのままにした。

もう一人、苦しんでいる人がいた。

家なきその人は都心の道路に倒れていた。

息が出来ないと声にもならない声で、周りの人々に助けを求めた。

それに気付いた女の子は先を歩く母親の足を止めた。

母親は振り返ると

「二度と目を合わせるんじゃない」

と言って女の子の手を引き、足早にその場を離れた。

結局は時代を越えて、苦しんでいた二人は誰にも救われることはなかった。

助けられない“理屈”なんて一生わからなければいいのに






あきゅろす。
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