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甥っ子めぐたん
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じゃがいも・にんじん・玉ねぎ・バラ肉。辛口ルーを突っ込んで鍋の蓋をとじた。
弱火にして生ゴミとなった野菜の皮をポリ袋に捨てる。反透明な袋にはコンビニ弁当より生ゴミの方が目立っている。

彼が来る前との違いは明らかだった。

「秀明さん、なにか手伝いますか」

狭い台所に小さな男の子が顔を出す。色素も体も薄いつくりのかわいい甥っ子。

「大丈夫だよ。ルーが残ってたからカレーにしたんだけどカレー食えるか?」

ほんと気のつく彼が横で包丁とまな板を洗う。その耳がほんのり色づいて

「はいっ大好きです」

淡い少年の香りがした。

「そらよかった」

くしゃりと栗髪に右手を絡めてその耳を隠す。触れた瞬間より艶めいた色に見えたのは幻覚妄想の類いなはず。

いけない衝動スイッチを見つけてはならない
隠してしまっておかなければならない

だからお前もいい大人をからかうんじゃありません

美味しそうなカレーの匂いなのか、おいしそうな彼の香りなのか。 誘発材に促されてキュンと腹の虫が鳴いた。



「うわぁ、すごく美味しい。秀明さん料理上手ですねっ」
「めぐみほど上手くねぇって。まだあるからもっと食えよな」
「はい、いただきます。あっ麦茶お代わり要りますか?」

「ん〜」

ミネラルたっぷり麦茶がグラスに注がれる。俺のに注いだ後にめぐみも自分のグラスに足した。
俺より一回り小さいカレー皿にガラスカップ。男の一人暮らしに2組なんて揃えてなかったから間に合わせで大変申し訳ない。

この目の前で行儀良く麦茶を飲む甥っ子が来てまだ3日目だ。やっと歯ブラシが2本並んだ程度。そろそろ寝る場所を整えてやらなきゃな。

それがお前のためになるんだ
まぁ俺のためなんだけど

自分が性犯罪へ走らないための防御壁を作らなければ

「どうしたんですか?リモコン取りますか」
「あっ、いや…え〜。そうだリモコンだなリモコン」
「はいどうぞ」

犯罪者予備軍の視線も無垢な心で左へ誘導する。左側にあるテレビへ無意味に電波を送ってチャンネルを回す。

チラ見しためぐみの耳たぶはもう元の雪色だった。

「お前明日なんか予定ある?」
「明日はなにもないですよ。あっ、でも洗濯物が溜まってるからランドリーに行く予定です」
「あぁ〜洗濯機も買わなきゃなぁ」
「そんなっ、溜まる前におれが行くんで気にしないでください」

ゆるいウェーブ描く唇が麦茶の滴をのせて光る。不埒な指先で拭ってやりたいけど、きっとその行動は“叔父さんと甥っ子の範囲”を逸脱している。

いかんいかん
痴漢あかん

「じゃあしばらくはランドリーで済ませてくれる?」
「はいっ」

ほころぶ小顔が花のよう。テレビ見るふりして盗すんだ笑顔がデザートにもなる。

美人は3日で飽きるって言うけれど
美少年は3日たっても飽きないって

そんなの知ったところで何の自慢にもならない

でもコンビニ弁当より手作りご飯に飾られたちゃぶ台はなんだか楽しくて、その向かいにちょこんと座る美少年に感謝した。



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