甥っ子めぐたん 3 「ごめん。中学生にもなって可愛いって言われても嬉しくないよな」 「そんな、ぜんぜん‥」 「これから気をつけるわ」 「ぉ、おれは嬉しいです。秀明さんに可愛いって言ってもらえると、心がほっこりします!」 シャツの胸元を握って俺に訴えてくる。俺が可愛いって言うだけで、その場所がほっこりしてくれるんだろうか。 そう思うと同じ場所が温まる。同じ温度、同じ数だけ脈打つ気がした。 「ん。俺もお前が元気になってくれると嬉しい、ここんところが温まるよ」 「え‥秀明さんも?」 自分の左胸に手を宛てた。そこへ恐るおそるめぐみが手を重ねた。 ぴたりと合わさる手が温度と速度を高める。 「あ‥ほんと。秀明さんのここも温かいです」 「だからたくさん食って早く元気になれよな」 「はいっ」 めぐみが体いっぱいで頷く。ベッドがゆらり揺れて世界も揺らいだ。 めぐみが持つ小さいところも細いところも可愛い。唯一大きな瞳を手のひらで愛撫して、また一匙茶碗にお粥を盛った。 さすがに全部は食い切れなかったけど、普段以上に食い気はあった気がする。1杯半食べためぐみを風呂へあげ、さっさと布団を被せてやった。 俺も入れ違いでシャワーを浴びた。電気を落とした居間ではめぐみが寝ている。 しょぼい電灯の下、台所でレンジを回す。めぐみが残したお粥と塩味の強い味噌煮を、立ったまままとめて胃に突っ込んだ。 「さてと‥俺も寝るか」 歯磨きを済ませてベッドへ近づく。起こさないよう細心の注意を払って体を突っ込んだ。 寒くないかな さっきは寒がってたみたいだけど そんな隅っこで丸まってちゃ布団かかんねぇだろが 眠ってるのを起こしたら可哀想だ。だから言いたいことは態度で示す。 壁に引っつくようにしてた体を寄せて、肩まで布団を引き上げた。縮こまっていた足も自由に遊ばせてやった。 「どう頑張ったってそんなスペース取んないんだから‥夢の中でくらい羽伸ばしてろよ」 右巻きなつむじに囁きかける。正面から向かい合わないのは、寝顔を見たくないから。 ほんとは見たいけど前科持ちにはなりたくないのでね。誘惑に勝てる理性を養ってからだな。 それか 誘惑に負けていっそのことめぐみと‥ 「なんてな。ナイナイ」 甥っ子とそんなこと出来るかっての。考えてもみれば、めぐみはただの中学生の男の子だ。 いくら綺麗で可愛いくて色っぽくても、超えてはいけない領域とゆうものがある。 でも万が一 万のなかにひとつの確率で めぐみが"いい"って言ってくれたら 超えてはいけない領域を侵してもいいかも知れない 目蓋を閉じてもピンクの舌や、ぷっくりした唇が鮮やかに見える。残像にしてはリアルで掴めそうだ。 その在りかを探るように、腕を小さな体に巻きつけた。吐息めいた寝息を繰り返す唇を撫でる。 そして 「やっぱ熱っぽいな」 さっきは届かなかった額に手を伸ばした。左手ひとつで簡単に隠れてしまう額が愛おしい。 指先に感じる睫毛の硬さを楽しみながら、つむじにキスをした。起きてる時には出来ないのに、眠っているとダメだな。 いとも容易くタガが外れてしまう あぁ とうとうキスしちゃったよ 「明日はもっと美味いお粥作ってやるからな‥」 罪悪感と達成感とが攻めぎ合って、結局こんなことしか言えない。万に一つの可能性を夢見て俺も眠りについた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |