甥っ子めぐたん 5 壁の時計を見ると日付が変わって30分くらいたっていた。眠くはないけど、やることもない。 手持ち無沙汰に1週間分の疲れで重くなった肩を回してみる。隣じゃあ重そうな目蓋でトロンとしためぐみがいた。 「眠いか?」 「えっ、ぜんぜんですっ。眠くないですっ」 「無理すんなって。お前が寝るなら俺も寝ちまうかな」 「ぁ…い、一緒にですよね」 だからそこ強調すんな 「まぁ今日はな」 「はいっ」 眠気も振りきって大きくうなずく。俺の黒目が浮き出た鎖骨に行ってしまうのはご愛嬌だ。 「布団は明日買ってやるからな。今日限りってことで我慢な、それでいい?」 「……」 また悔しそうな表情で唇を食む。 なにか言いかけようとして細いアゴが動いたけど音は響かなかった。繊細なアルト声は目立たない喉仏の奥に引っ込んでしまった。 そんなに悩むのはお止めなさい さぁ叔父さんに言ってごらん なんでも叶えてあげるよ とは言えないから2割程度の値で問いかける。 「え〜、どうした急に。なんか気にいらない?」 「いえ…でも明日は雨かもですよ」 「マジか。さっきは快晴って言ってたけどなぁ」 「その…たぶんニュースで」 “かも”とか“たぶん”ってなんだ お天気お姉さん曖昧すぎるだろ ツッコミたいけど突っ込めない。別にめぐみはボケてるわけじゃないし。 その証拠に狭い肩がより縮こまって小さくなってしまった。可愛いけど可哀想な気もする。 「ふぅ、俺にそんな気ぃ使わなくっていいからな。大丈夫。明日は晴れだし金もまぁそんくらいはある。なっ?」 「はい、ごちゃごちゃ言ってすみません」 「じゃあ寝るぞ。電気消すから」 天井から垂れるヒモを2度引く。薄暗く染められた中で、ぼんやり浮かぶ白い肌の隣に転がった。 壁側のめぐみと背中合わせは暗黙の了解。今日もその構図に収まった。 「寒くねぇ?そっちちゃんと布団いってるか」 「大丈夫ですよ。秀明さんは寒くないですか」 「ん、平気。じゃおやすみー」 「おやすみなさい」 少しはみ出た肩もなんのその。めぐみが寒くなけりゃそれでいい。 背中の体温を意識しないように、明日の出費やらを考えながら眠りについた はずが近距離で感じる吐息に寝入りばなを挫かれた。 後ろを向こうにも一昨日の二の舞は困る。手が柔らかな肌を求めて、動きだす瞬間を狙っているんだから。 あぁ… マジで欲求不満なのか俺 いけない衝動にいけない妄想が展開される直前、スンと鼻を鳴らす音に後ろを振り返ってしまった。当然ベッドが悲鳴をあげて危険信号の発信。 振り返った先には予想外にもパッチリ開かれた瞳と、不安そうに垂れた眉があった。俺と目が合っても何も言わない。 「めぐみ?」 「……」 反応なし 「眠れないのか?」 「……」 依然反応なし まるで童謡のお姫様みたいな寝方で俺を見つめる。華奢な手首、凹凸のない手の甲までが完璧な美少年だった。 マズイ気配がする。熱くなる股間にパンチをお見舞いしたいところだが、甥っ子の愛らしい前歯が見えたことで意識が引き戻された。 [*前へ][次へ#] [戻る] |