[通常モード] [URL送信]
流星群と亡者の最期


しかし、気を緩められたのもそこまでだった。

突然起きた何か重いものが落ちる音と、激しい振動がウィズ達を襲う。

音の発生源を振り向けば、そこには厭な笑みを浮かべるスカルミリョーネがいた。

足元が大きく凹んでいることから、どうやら向こう岸から跳んできたようだ。

この巨体でこの跳躍力とは、恐れ入る。

「しつけーな!!」

苛立ったパロムに、ウィズは心の中で頷く。

セシル達の表情からは、自分やパロムと全く同じ気持ちを抱いてることは明白だった。

だがスカルミリョーネはウィズ達の様子を意に介さない。

「なるほど…さすが“創魔“といったところか。だが、所詮は子供! 経験値の差は埋められまい!!」

スカルミリョーネの言うことは事実だった。

確かに自分のような子供はよほどの事がない限り、経験値の差は埋められない。

だが、それは一対一の話だ。

「死ね――」
「“ファイラ”!!」
「“ケアルラ”!!」
「ぐおぉおぉぉぉ!?」

ウィズに腕を振り下ろそうとしたスカルミリョーネに、パロムの火炎魔法とポロムの治癒魔法が炸裂した。

のたうちまわるスカルミリョーネに双子が不機嫌丸出しの言葉を浴びせる。

「いるのはウィズだけじゃねーぞ!!」
「私達を忘れてもらっては困りますわ」

セシルとテラも、全くだと言わんばかりの表情でそれぞれの武器を構える。

そう。

経験値で勝てないなら、残る勝機は二つ。

一つは単純に力、スピードなどのスペックを上回る事。

もう一つはチームで挑み、経験不足を補い合うことだ。

…というか、確かこのスカルミリョーネという男はセシルの妨害に来たはずではなかっただろうか。

なんだか、いつの間にか自分だけを目の敵にしている気がする。

そんなことを思ったウィズは少し首を傾げていたが、双子が同じ詠唱を始めた事に気付く。

「おにーさん! ぼくとしばらく前にでてじかんをかせいで!!」
「?!」
「はやく!!」

何の事か解らなかったらしいセシルは、それでもウィズの様子から何かあるのだろうと判断したのだろう。

すぐに漆黒の剣を構え、スカルミリョーネに向かって行った。

すぐにウィズも杖を小振りの長剣―――スモールソードに変形させ、セシルの後に続く。

セシルが剣を振り下ろすと、スカルミリョーネがセシルに向かって口から異臭を放つ息(おそらく毒ガスだ)を吹き掛けようとする。

だが、そうはさせまいとウィズが目に映らない速さでスカルミリョーネの眼前に迫り、スモールソードを7回振るい、左目を斬りつける。

痛みと怒りに震え、絶叫するスカルミリョーネは今度はウィズを踏み潰そうとしたが、テラの唱えたファイラが容赦なくスカルミリョーネの身体を焼く。

完全に頭に血が上っているスカルミリョーネは次にテラを狙うが、それを見越したセシルが再びスカルミリョーネの身体に剣を突き立てる。

スカルミリョーネはあちこちから襲う攻撃への対処にもたついていた。

それが最終的な敗因になったのだろう。

「!! みんな、さがって!!」

ウィズは双子から放たれている魔力の高まりにいち早く気付き、セシルとテラに叫ぶ。

その叫びを聞いた二人はすぐに下がり、それを確認したウィズもスカルミリョーネの残った右目を斬りつけてから全速力で退避する。

ウィズ達の退避が完了した直後、まるで示し合わせたかのようにそれは発動した。

『“プチメテオ”!!』

辺りに響く双子の声。

その声に応えるように、スカルミリョーネに向かって小さな隕石の雨が降り注ぐ。

さすがのアンデットといえど、この隕石の威力は堪えられるものではないらしい。

隕石が降り注ぐ度に轟音と悲鳴が辺りに響き渡る。

「ウィズ、これは…」
「これは“ふたりがけ”っていう共鳴発動魔法だよ。パロムとポロムだからできるまほーなの」

すごいよねー、とウィズが笑えば、セシルとテラは呆然と目の前の光景を見る。

確かに、その威力は凄まじかった。

魔法発動が終わった時、スカルミリョーネの身体は発動前の半分も無かったのだから。

だが、スカルミリョーネの動きは止まらなかった。

「ぅ…ぐぉぁッ…この、私が…人間…ごときに……ッ」

ウィズによって斬られた両目に怒りと憎悪を浮かべながら、こちらに向かおうとする。

だが、光が見えないまま進んだその先は―――





「ぅぐあぁぁぁあぁぁ――…!!」





それは、亡者の最期だった。

ウィズは、谷底に落ちたスカルミリョーネを無言で見つめる。

これが、自ら闇に堕ちた者の末路なのだろうか、と哀れみと切なさを抱きながら。



[*前へ][次へ#]

15/17ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!