不審な再会
全員が息を呑む中、ゆっくりと扉は開かれる。
やがて、開かれた扉からは細身の騎士が現れた。
竜を模した兜と長槍を手にしているところを見ると、どうやら竜騎士らしい。
顔の半分以上が兜に覆われてるので、唯一見える口元からしか判断出来ないが、ひょっとするとセシルとそう変わらない年齢ではないだろうか。
正体不明の人物の出現に、クリスタルルームの空気は一層張り詰める。
しかし、その緊張はセシルによって破られた。
「カイン!? 君もここに来ていたのか!」
セシルが驚きを浮かべて呼んだカインという名に、シルキーは心当たりがあった。
ローザとセシルが話していた幼馴染みの竜騎士―――どうやら、現れた彼がそうらしい。
だが、それでもシルキーは大剣から手を離すことはしなかった。
(再会を喜ぶセシルには悪いが…この男、絶対味方じゃない)
だって、おかしいではないか。
もし味方だというなら、何故自分達に、これほどの敵意と殺気を向けているのだ。
一方セシルは親友との再会に喜び、親友の違和感に全く気付いていない。
シルキーの眼差しが鋭くなった事にも気付かず、親友が自分達の味方だと信じたまま話を進める。
「カイン! 風のクリスタルを守る為に一緒に戦ってくれ!」
セシルの声には、頼もしい味方になる筈の親友の出現への安堵感が滲んでいた。
当然、彼もそれに応えてくれる―――セシルは、そう思っていたのだが。
「………クッ、クククッ」
「……カイン?」
突然、低い笑い声を零す親友に流石に違和感を感じ、怪訝そうに声をかけるセシル。
何故だろう……その笑い声には、嘲りが感じられた。
親友から向けられる筈のない感情を感じ、戸惑うセシルだったが、竜騎士はそんなセシルの戸惑いを無視し、口を開く。
「戦う…か。あぁ。勿論戦うさ……」
その時、戸惑うセシルは気付かなかった。
親友の槍を握る手に、力が込められたのを。
兜から覗く親友の目が、殺意に満ちていたのを。
だから、普段よりも反応が遅れてしまった。
「セシル!! お前となァッ!!」
稲妻の如く突き出される槍。
その穂先は、真っ直ぐセシルの胸に向かっていた。
セシルは咄嗟に、防ぐ為に背の剣を抜こうとする。
だが元来、暗黒騎士は竜騎士よりも遥かに素早さに劣る。
一度遅れを取れば………結果は見えていた。
「セシルーーーー!!」
静かな光を反射するクリスタルルームに、誰のものかも解らぬ絶叫が響き渡った――…
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