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幕開け


シルキー、セシル、ギルバート、ヤンの持ち場は城の正面玄関だった。

バロン軍が白兵戦で攻め入ってきた時、実力の高い彼らが応戦して敵を城の奥に入れないようにする為の配置だ。

なにしろファブールは城に兵士だけではなく、女子供も含めた民も住んでいる。

もし奥に入り込まれたら、彼らの身の危険も増すのだ。

それを避ける為にも、こちらはなんとしても敵をここで食い止めるしかなかった。





「…本当は、君にもローザやリディアと一緒に居て欲しかったんだけどねぇ?」
「……くどいな」

嫌味ったらしく笑うセシルに、シルキーは顔を引き攣らせる。

どうやら、女子供は後方支援、という提案を無視して前戦に出てきたのをまだ根に持っているらしい。

故に、先程からずっとこんなやり取りを繰り返していた。

勘弁してくれ、とシルキーが疲れた表情で言えば、ようやくセシルは胡散臭い笑顔を引っ込める。

ただし、今度は唇を尖らせ、拗ねた顔をする。


(男なのに拗ねた顔が似合うって……)


しかも、なんだか子供みたいで可愛いし――……あれ? そんな風に思うなんて、自分はもう末期なのだろうか?

ってか、コイツ本当にあのバロン軍赤き翼の司令官だったのか?

シルキーが軽く混乱状態で頭を抱えていると、セシルはそういえば、と言う。

まだ何か文句があるのか、と身構えるシルキーだったが、続く言葉は意外なものだった。





「君はどうして僕達に付いて来たの?」
「………は?」

思わず出た声は、かなり間抜けなものになった。

だが、無理もない。

何故そんな事を今更聞くのか、とシルキーは思う。
だがセシルはそんなシルキーの様子に構わず話を続ける。

「だってさ、言い方は悪いけど、君はただローザに雇われてただけの身だろ? それなのに、わざわざこんな危険な旅に何の報酬も無く同行するなんて――…」

僕達は有り難いけどさ、と本当に嬉しそうに笑うセシル。

シルキーは少しの間その嘘のない心からそう思っている笑顔を無言で見つめた後、やがて疲れたように溜息を吐いた。





「……私にも、色々事情があるんだよ」





…そう答えるしか、なかった。

その本当に疲れきった様子が気になって、思わずセシルが事情って何、と聞き返そうと口を開きかけた時―――





「き、来ましたぁぁーッ!! 赤き翼の飛空挺が、みっ、見えてきました!!」





見張り番の上擦った声が、城中に響き渡った。

それを聞いたシルキーとセシルの目は鋭くなる。

他の戦士達も同様だ。










こうして、風のクリスタルをめぐる戦いの幕が上がった。



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