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人命救助


崩れた城の通路を全速力で駆け抜け、進路の邪魔になる瓦礫は背にある大剣を抜かず、ある時は拳で、またある時は足で容赦なく蹴り砕く。

今は、剣を抜く暇も惜しいのだ。

こういう時に、心から思う。

甲冑は邪魔だ。防御力はあるが動きにくいし、重いので服の時よりスピードがどうしても落ちる。

この依頼が終わったら、この鎧を脱いでまた昔の服に衣替えでもしてしまおうか、と思いながらも、シルキーは走る速度をさらに上げ、声がした場所へ向かったのだった


***


「…ぇくっ、ヒック…ッ、…父さぁん…」

その幼い少年は、涙を流し、嗚咽を漏らしながらも必死に瓦礫をどかそうとしていた。

少年がどかそうとしている瓦礫の下には、彼の父親がいた。

時折「ぅ…ッ」という呻き声を漏らしていることから、まだ息があるのは少年にも分かった。

だがその呼吸音は小さく、このままではいつ死んでしまってもおかしくない。

そうなる前に何としてでも父親を救い出したかったのだが…――

「う…ごけぇ…ッ、動けよぉ…!!」

どんなに少年が力一杯瓦礫を押しても、瓦礫は微動だにする気配がなかった。

父親の上にのしかかっている瓦礫はとてつもなく巨大で、少年たちがいる部屋の空間の三分の一を占める程だった。

(このままじゃ、父さんが…!! 誰か…誰か、助けて…!!)

――ガタンッ

「!? ――誰かいるの!?」

かろうじて残っている扉の向こうから聞こえた音に、少年は自然と体を強張らせる。

一体誰だ。ここにはもう、生きてる人なんてほとんどいないのに。

…まさか、バロンの兵隊!? 僕達を殺しに…――!?

どうしよう…! もしそうなら、僕は今度こそ……ッ


扉のノブがゆっくりと回るのが見え、少年は思わずギュッと目をつぶる。

そして、現れたのは…――


「……あ、いた!!」

(…え? 女の人の声…?)

予想と違った声に、そろそろと目を開けてみる。

そこにいたのは、茶髪のポニーテールの、甲冑を纏った女性だった。

女性は少年を見るなり、ほっとしたような表情を浮かべながら近付いてきた。

「良かった…やっぱり聞き間違いじゃなかったか。おい、大丈夫か?」
「え…あ……」

あまりに予想外だったのに加え、女性がとても心配そうに尋ねてきたものだから、思わず少年は多少詰まりながらも、はい…、と答える。

一瞬ポカンとしてしまった少年だったが、父親の呻き声でハッと我に帰った。

「父さん、しっかり…!! あ、あの、父さんを助けて下さい!! 瓦礫の下敷きになってて…ッ、でも、僕全然動かせられなくて…ッ」

待ち望んだ助けが来て慌てて状況を説明しようとした少年だったが、女性がスッと手を上げてやめさせた。……まるで、説明しなくても分かってる、と言うように。


「…このくらい、大丈夫だ」


女性はぐるぐると腕を回し――そして、少年にニッと笑いかけた。





「私に、任せろ」





直後、少年は信じられないものを見ることになる。



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あきゅろす。
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