頂き物
love sick.4
動揺する頭と動かない口とに、すっかり湯隆は我を失っていた。けれど白勝はその湯隆の様子に何も反応せず、唯彼をとっくりと見上げている。
───体に触れた事を、咎められるのだろうか。
普通に考えて、白勝の口からこぼれるのは罵りの言葉であって然るべきであった。湯隆は息を呑んだ。
「───…白、勝、」
湯隆の声に、白勝は又一つ瞬きをした。
「湯隆、」
白勝が名前を呼んだ。開いた唇から、誘うように前歯が見えた。そして、
「────…眠い」
蕩けた様にそう言って、白勝は体の力を一気に抜いた。目の前に座っていた湯隆の胸に白勝の小さな頭がぶつかって、やがて居所を決めた様にしがみ付いてきた。
「!!!!」
赤く灼けた石を水に放り込んだ時の様だった。
白勝の体の感触が熱となって全身を廻り、爪先の血液迄沸騰した。
(何だ、何だ、一体、)
一体何が起こっているんだ。
灼き切れそうな脳の神経とは別に、物質的な肉体は、卑しくもしっかりと白勝の頼りない体を感じている。その暖かな感触がより一層眩暈を呼び、湯隆はいっそこの侭意識を失えたらどんなに楽だろうと半ば本気で思った。
まるで永遠に続くかの様な、そんな錯覚さえ起こしそうだった。
しかしその中にあって、耳に響くのは白勝の大人しい寝息だけである。湯隆が恐る恐る腕の中の顔を覗くと、果たして寝息に似つかわしい無防備さで眠りこけている白勝なのであった。
湯隆は脱力した。拍子抜けともいえる。
(───俺ばかり慌てて、全く俺は、)
馬鹿な奴だと思いつつ、しかし自嘲ばかりではない。
想いを、欲望を自覚したからといって、すぐにどうこうするものでも無いしなるものでも無いと、そう思うと不思議と気が楽になった。何にせよ、まだ自分の想いが少し進展しただけで、白勝との仲が劇的に変化した訳でもない。
一人で先走っていた自分が可笑しかった。
焦るのは未だ早い。これから共に暮らしていく日々の中で、少しずつ少しずつ、自分が今よりもっと白勝にとってのかけがえの無い存在になっていけば良いのだった。
そして、いつか、こんな風に朝寝がしてみたい。
気持ちの整理がつくと、湯隆は酷い眠気に襲われた。普段とは比べ物にならない位、精神を酷使したからだろうか。
湯隆は未だしがみ付いている白勝と共に寝台に倒れ込んだ。とろりとした睡魔に侵され乍ら、白勝の頭を一撫でし、目を閉じた。
今夜は良い夢が見られそうだった。
翌朝、白勝の叫び声が梁山泊内に甲高く響き渡ったのはそれは又別の話。
...終
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鳩様のサイトの1万記念フリーリクエストで湯白をリクさせて頂きました。
このお話がメールで送られてきた時、携帯で人を倒せるんだなと思った…本当に何て僥倖…!!
真面目な話鳩様の書く湯隆が素で好みです(聞いてない)
こんな人リアルにいたらいいのに…!
鳩様、目茶苦茶素敵な湯白を有難うございました…!
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