“生きている”ということ【シンアリ】
シンクはいつも淋しそうな気がする、です。
シンクが淋しそうだとアリエッタも……。
♪─♪─♪─♪─♪
「……は?」
シンクはポカンとしてしまった。目の前の彼女からの言葉で。
───シンクはいつも淋しそう、です。
(僕が淋しそうだって?そんなはずない。僕は生まれたときから一人のようなものだったんだ)
導師としての能力が無く、一度廃棄された過去を持つシンクには、知らないものがある。
それは……。
「シンク、分かる……?」
「……え」
「えっ…と“温かい”の分かる……ですか?」
「分かるけど。何の意図があって……」
「よかった、です。温かいのを感じれるのは“生きてる”証拠です」
真剣な瞳で自分を見てくるアリエッタに、思わず笑みが浮かんだ。だが、笑みといっても良い方の笑みではなかった。
それは嘲笑い。
“生きている”ということ
シンクは自分の生を呪っている
アリエッタはそれを知らない
だが、仮に知ったとしても
きっと同じことを言うだろう
「シンク……?」
「生きてるだって?僕は生きるのが嫌なんだよ。こんな世界も、僕を生んだ預言も大嫌いだ!」
言ってしまってからシンクは気付いた。アリエッタの瞳に涙が浮かんでいることに。
「……シンクの馬鹿ぁっ!」
少女はそのまま走り去ってしまった。
残された少年は呆然と去り行く背中を見つめるだけ。
「ねぇ……アンタは平気なの?こんな世界に“生きている”ということがさ」
こんな世界
無くなってしまえば良い
そう、思っていた
君を想うようになるまでは
「僕も弱くなったもんだね」
でも、心の中に踏み込まれるのは
例え君でも怖くて
君に限らず
僕は他人を遠ざける
「シンク」
「……アンタか。ヴァン」
「お前にはこれからアリエッタと共に任務についてもらう。お前なら大丈夫だろう」
僕は今日も“生きている”
偽りの仮面を被って
fin.
♪あとがき♪
偽りの仮面は心の仮面でもあり、顔を隠すための仮面でもあったりします。
別館と同時up。
これを書いていたらスレルクを想像してしまった(爆)
2008*12*5
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