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その声は近く遠く(テスタ)*

赤い。目の前が赤い。真っ赤だ。
振り上げた鎌が赤いのが分かる。握り締めた手も赤い。爪と肉の間までも赤い。
下で唇を舐めると赤い味がした。それがまた血を沸き立たせ、私に力を与える。

「…殺せ、殺せ!」

後ろに続くのは大型ギアだった。口も聞けぬかなり低級のギアだがパワーは申し分ない。

彼らは声無き声をあげて家と人を飲み込んでいく。私はそれにのって、手にした鎌を振りあげ続けた。

元々さして大きくも無い村は瞬く間に狂乱の坩堝と化す。農具と包丁程度しか武器を持たない村人達は抵抗も空しく呑まれていった。

進軍の後路には屍が累々と積み上がり、同胞の尾の一振りで呆気なく家々が崩壊していく。
ああ、逃げ惑う人間どもの哀れな声はなんと心地が良いのだろう。

崩れ落ちる村と積み重なる骸の山との織り成す光景とはなんと壮観なことだろう。

鼻孔をくすぐり全身の血を沸き上がらせる鉄錆のような人の生の匂いはなんとかぐわしいことだろう。

人間など要らない存在なのだ。滅びるべきなのだ。殺せ、殺せと頭の中で声が響く。ジャスティス様がそうおっしゃっている。


…では何故?

静まり返った屍の山に囲まれて、からん、と手から鎌が滑りおちた。



頭が痛いのは何故だ?

胸が苦しいのは何故だ?

この、頬を伝う透明な血は何だ?



胸の奥で響く声が誰の声なのかも分からないまま、私はまた鎌を振り降ろした。





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最近、テスタが好きな愛のベクトルが歪んでいる気がする。

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あきゅろす。
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