喜劇的エチュード
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7
なんだか奇妙な感じだ。
見た目は現在推定5歳の俺だが、精神年齢は15歳。
なるべく子供らしい話し方を心掛けているが、己の滑稽さ加減に失笑が漏れそうである。
「じゃあ、わるい人がもどって来る前に、ここから出よう!」
「うん…、そうだね!」
そう言い合って顔を見合わせ、俺と少年は足音を立てないように気をつけながら倉庫を出たのだった。
そのまま貨物庫らしかった倉庫から離れ、俺達は交番に行く為に市内を雑談を交わしながら歩いていた。
「そう言えば、きみの名前は?
僕は涼って言うんだ。」
随分今更な気もするが、仲良くなった少年の事を少年と呼ぶのは少々物悲しい。
この少年は意外と言う程では無いが予想外に(矛盾してるが気にするな。)博識であった。
元来考察や討論等を好む性質である俺は、少年と書物等について討論する事が存外気に入ったのである。(けど5歳児と本気討論って…。)
少年は話し方だけでなく仕草からも何となく気品が溢れており、誘拐の事もあってどうやら良家の御子息のようだ。
アイスブルーの瞳。良家の御子息。
ふと、脳裏に俺の小説のキャラである一人の人物がよぎったが、そんな筈が無いと心の中で否定した。
(有り得ない有り得ない。)
(だってどんな偶然だよ。)
(この少年が、)
「ああ、僕の名前は祐。大堂祐って言うんだ。」
祐って呼んでよ!と無邪気に笑う少年。基い祐の横で、俺の頬が引きつった。
有り得ない。否信じたくねえ…!
――仲良くなった少年が、10年後に俺様会長になるなんて!
―俺は少々ぎこちない笑顔で祐にニコリと笑いかけながら、祐に聞こえない様な小さな声でポツリと意味不明な比喩表現を呟いてみる。
「…《後ろに向かって前進だ、ただしムーンウォーク》みたいなっ。」
ああ落ち着け俺。
動揺し過ぎてテンションが可笑しいぞ。
可愛らしく小首を傾げた祐を見ながら、俺は小さく溜息を吐いたのだった。
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