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夢小説(その他)
飴と鞭(ネウロ ギャグ?)

※主人公が鬼です。観覧注意


「…桂木弥子、魔界…探偵事務所…?」

書かれている文字を改めて口に出して読み、アサヒはポリポリと頬を書いた。

桂木弥子

どこかで聞いた名前だが思い出せない。

記憶が確かなら、ここには金融会社があったはずだ。

「引っ越したなら言ってよ〜…。せっかく持ってきたのに…」

ぶつぶつと呟いたところでこちらをじっと見つめる少女と目があった。

いや、正確には少女が見つめているのはあたし…ではなく、あたしが握っている紙袋だ。

「…あ、カツラギヤコ…あぁ、最近有名な探偵さんだ。」

指差しながらポツリと呟けば、涎を垂らしそうな顔をしていた少女がハッとしたようにあたしを見つめた。

「え、えっと〜…ご用ですか?」

「あのさ、早乙女金融がどこに移ったか知らないかな?」

「あ、それは・」

弥子が答えようと口を開いた所で、乱暴な仕草でドアが開く。

「やってられるか…ん、アサヒ…」

愚痴りながらドアを開けた人物は、ドアの前に立つ女の名を呼んだ。

アサヒと呼ばれた女は、ドアを開けた男とドアに書かれた文字、そして弥子の顔を見つめ…

「吾代、あなた探偵目指してるの?」




事の成り行きを聞くなりアサヒは小さなため息をもらした。

「吾代、早乙女さんが死んだ事あたしには教えてくれても良かったんじゃない?」

「別にお前には関係ねぇだろ。」

「早乙女さんはあたしの大事な友人よ。…まぁ、事が解決してしまった以上、あたしにできるのはビールをそなえるくらいだけど…。」

じわりと黒い瞳が潤む。

「もしその場にいたら殴ってやったのに。隠し立てしたあなたたちもね。」

そう呟いたアサヒの声は泣き出しそうな響きを含んでいる。

自分を励ますようにぱちぱちと頬を叩きアサヒは、弥子に微笑んだ。

「吾代がお世話になってます。良ければどうぞ。」

そんな言葉とともにスッとアサヒは弥子へ持ってきた紙袋を差し出す。

「えぇーっ!良いんですかぁ?!」

キラキラと輝いた瞳にアサヒはにこりと微笑む。

「何だよ、それ。」

「手土産の莓大福」

「はぁ?そんなもん、いらねーよ。」

失礼極まりない吾代の言葉に応えたのは、涎を垂らさんばかりの弥子だ。

「吾代さん。これはあの有名な老舗和菓子店の莓大福よっ!大きな莓は果汁たっぷりで餡との相性も抜群…もう、本ッ当に美味しいんだから!いっただきまーすっ」

かぷっと大福にかぶりついた弥子の姿にアサヒは笑みを深める。

「んーっ!おいひ〜。」

「…吾代、少しは弥子ちゃんを見習いなさい。」

そう呟きながら莓大福を差し出し、アサヒはにぃっと笑う。

「………。」

無言のままそろりと伸びた手

その手が大福を掴む前にアサヒはひょいと手を引き…吾代を見つめる。

あからさまな、否、あまりに低俗な嫌がらせに吾代の顔が引きつった。

「その前に吾代、あたしお茶が欲しいな〜♪」

その顔に向けアサヒは、自分の要求を伝える。

「………チッ」



嫌そうに舌打ちをもらした吾代は叩きつけるように机にお茶を置く。

乱暴な手つきで置かれたせいで机には、こぼれたお茶が模様を作り上げてた。

腹を立てても良さそうな接客態度だが、アサヒは特別文句も言わずに茶を啜る。

「温い…」

「あぁ?!入れ直せってか!」

「いいえ、それより吾代、あの窓に張り付いている青年はあんな場所で何してるの?」

アサヒの指先が窓ガラスに足をつけた青年を指差す。

ぶーっ!

盛大にお茶を吹き出した吾代の前で弥子は慌ててカーテンを引く。

「なっ…なんでも、ない…です。わ、私たちとは無関係っ、あはっ…あははは」

乾いた弥子の笑いに低い声が答えた。

「下等生物が何のつもりだ。」

ズルリと窓やカーテンをすり抜け室内に入ってきた青年に弥子は血の気のない顔を向ける。

「何やってんのよ。ネウロ〜っ!」

まじまじと物珍しそうな視線を送るアサヒから隠すように弥子はネウロに詰め寄った。

あんな人間離れした行動の後では、どうフォローしても白々しい。

「あぁ、失礼しました。僕は、桂木弥子先生の助手を務めている脳噛ネウロと申します。今手品に凝っていまして…」

「あたしは、天野アサヒです。」

案の定、名乗るアサヒの顔には、明らかに不信感が浮かんでいる。

「お茶を用意してきます。さあ、先生行きましょう。」

白々しい仕草で部屋の隅へ行き、ネウロはギロリと弥子を睨んだ。

「…謎の匂いの欠片もない小娘を招き入れるとは何事だ。」

ガッツと弥子の頭を掴み呟くネウロに弥子は必死に反論する。

「あ、あの人…吾代さんの知り合いで…。」

「…僕二号の知人、それはつまり奴隷人形3号希望者という事だな!ミミズ以下の頭脳しか持たない貴様にしては、上出来だ。」

「ちょっ…ちょっと待って!あんな優しそうな人巻き込めないよ!」

「ミミズは黙って地面の中を這い回るがいい。」

ギリギリと頭を掴む指に力を込められ弥子は奇妙な悲鳴をあげる。

「使える駒は多いにこした事はない。もっとも、あの娘は使う側のようだがな。」

「えっ…?。」

「…ふっ、我が輩が見たところあの娘は我が輩と同じ匂いがする。」

ネウロと同じ…。

うそ、あんな優しそうな人がコイツみたいな化物?!

にこやかなアサヒの顔が化物じみた姿になる事を想像し弥子はぶんぶんと首を振る。

有り得ない。絶対に有り得ないから!

脳内想像を全力で否定していた弥子の耳に吾代の声が響く。

「アサヒ、何でここに来たんだ?」

「集金の時間潰し。」

にこりと笑うアサヒ

町内会費の集金…なわけないよね。

早乙女金融の社長は友人だと言った人物だ。間違いなく、その系統の集金だろう。

でも、そんな事するようには見えない。

チラッとアサヒに目をやれば穏やかな笑みで吾代と談笑している。

「…支払日になると連絡がつかないお客様が最近多いのよ。支払えない時は前日までに必ず連絡を入れるように調きょ…説得したんだけどね。たま〜に、命知らずなお客様がいるから…。」

い、今あの人間違いなく調教って言いかけた。

「まぁ、今回は事務所の人間も見張っているから逃げる心配はないと思うけど…。新人さんだから気にかけておかないといけないのよ。まだ彼らを『信用』はしても、『信頼』はしていないから。」

「意味わかんねぇ…同じだろ?」

吾代の言葉にアサヒは満面の笑みで答える。

「『信』じて骨の随まで利『用』するけど、『信』じて『頼』りはしないわ。」

怖ッ!

この人怖いッ!

「言っただろう?我が輩と同じ匂いがすると…。」

ネウロの嬉しそうな言葉を肯定するように着信音が鳴り響いた。

「集金に失敗したみたいね…。」

ピッという通話開始の合図「……前置きはいらないわ。必要な事だけ言いなさい。」

穏やかな笑みと声

「そう、それで誰がミスをしたの?」

母性すら感じさせるそれは、少なからず相手に安堵感をもたらす。

「サクヤ、ね。分かったわ。サクヤにかわりなさい。」

アサヒの声からは、部下のミスを励ます上司の優しさが伺える。

「サクヤ、あたしが事務所に戻るまでに謝罪の言葉を考えておきなさい。あたしの靴を舐めながら懺悔すれば多少あたしの機嫌も良くなるかも知れないわよ。」

前言撤回

彼女は、鬼だ。

「…あんたの尻拭いはあたしがしてあげる。だから床にめり込むまで土下座して感謝なさい。あぁ、それから事務所を掃除しておいて。言葉通り塵一つ残さず舐めるように、ね。汚れていたら、屋上から紐無しバンジーさせるから。それじゃあ、お疲れ様♪」

鬼畜外道な発言を笑顔で一切の悪意を読み取れない口調でアサヒは告げた。

ネウロが…この狭い事務所の中に2人いる。

だらだらと冷や汗をかく弥子と吾代の前でアサヒは携帯を閉じネウロに向き直った。

「…ネウロさん、吾代をよろしくお願いします。早乙女の死を知らせないような恩知らずの調教…いえ、説得は本来ならあたしがすべき事柄ですが…生憎あたしのところにも能無しの駄犬がおりまして余裕がありません。是非、脳髄の奥底まで自らの主人が誰なのか叩き込んであげて下さい。」

なんで?!

「彼とは、同じ匂いを感じますから。」

声にならない弥子の突っ込みにアサヒは律儀に答える。

そしてこの瞬間、語るも恐ろしい外道同盟が設立したのである。

教訓

外面が良い人間ほど何を考えているのかわからないものである。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ん、ギャグか?
ネウロのDVDを2巻まで見たので記念に書いてみました。

楽しかったです。

アサヒさんお付き合いありがとうございました。

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あきゅろす。
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