このときだけは剣を手に
「剣を抜けよ」
言われた瞬間、脱力した。
がく―っと、オチる音すら聞こえた気がする。
「ゆ、夢の中でも変わらない……」
両手を膝についたまま苦笑混じりに呟くと、知盛はくつりと笑んだ。
「変化をお望みだったか?残念だな」
「その嫌みな言い方まで相変わらず……全くもう、一体」
《どの時点の》貴女の夢なの。
そう問おうとして、やめた。
夢の逢瀬にあまりにも無粋だったし、第一、どうせ答えてくれるわけがない。
「まぁいっか……あ―もう夢って便利。なんでここになら剣あるのよ」
手に馴染みきった剣の感触がある。囚われた「夢」の世界では、白龍の力が及ばず望んでも手にすることの出来なかった剣が。
「私も、知盛と斬り合いたいって思ってるから?」
だとしたら、自分も随分酔狂だ。知盛を笑えない。
複雑そうに眉を寄せた望美の姿をみて、知盛は愛しい女を見るように双眸を和ませて笑った。
「光栄だな……とでもいえば満足か?」
「全然。……だって、私たちが求めているのは言葉じゃないもの。」
でしょ?と言いながら刀を正眼に構えれば、紫の瞳が愉悦の色をたたえる。
「ああ……そうだな」
行くぞ、と言ったのは知盛、駆け出したのは望美。
なんて酔狂なのだろうか、夢の中でまで剣を手にして斬り合うなんて。
なんて酔狂なのだろうか、この夢が醒めなければいいと、心底願っているなんて―――。
END
夢の中でもかよ!
とゲームに突っ込みました。
私悪くない。 ←
20090622
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