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感覚麻痺1


血が、口の端から流れた。


切れたのではない。内臓にまともに衝撃をくらった結果の吐血だ。

そして、その衝撃の決定打となったのは自分の一振りだったと、望美ははっきりと自覚している。


剣の構えをといた望美の視線の先。ぐらりと揺れかけた身体を立て直した知盛の、鮮血に染まる口の端が、にっ、と笑みの形に歪められた。

「愉しかったぜ、龍神の神子」

その言葉を、望美は一体何度聞いただろう。
何度同じ言葉で返しただろう。

「私は楽しくないよ」

少なくとも、あぁまたか、と思うほどには聞いた。そのせいか、今では知盛の死はまったく望美に感慨を呼び起こさない。


それよりも、この戦の先に、次はどんな運命が待ち受けているやらと気が気ではなかった。

まったく、壇ノ浦の戦にかかると、誰それが死んだり誰それが裏切ったりと、ロクな運命が待っていない。
知盛が死んで悲しむ人だって一応いるのだろうけど、そんなことに思いを馳せられるほど望美のキャパシティは大きくない。

「それとも、死なないでくれるの?」

別の運命を辿ってくれるのか、という問いに、しかし知盛は笑っただけだった。それが答えだった。


ざば、と水しぶきがあがる音は、すぐに戦の喧騒にかき消されていった。



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