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dedicate to you(A×T)


ただひたすら氷点下に極限まで近づけたシャワーを全身に打ちつけて、どれくらいの間、僕はそうしていただろうか。

理解はしているつもりだった。けれど頭も身体もその事実にはついていかない。

嘘だろう?
何かの間違いだろう?

彼が、
ロックオンが、
撃たれた、なんて。


壊れたかのようにハロはその機械音で彼の名前を繰り返し繰り返し呼んでいた。

信じたくなかった。

もう、いない…なんて。




僕がそうしていたら部屋の呼び鈴が鳴り響いた。

こんな夜中に一体誰だと思いつつもシャワーから上がり簡単に身体を拭いてバスローブだけを羽織った。

2回、3回と呼び鈴が鳴らされる。
僕は冷え切って上手く力の入らない手で部屋のロックを解除した。

「誰…?」

扉が開くと同時に僕の目に飛び込んできたのは紫の髪の毛だった。

「てぃ、ティエリアっ、」

ティエリアは部屋に入ると同時に僕に抱きついてきた。しかし僕はいきなりすぎて胸に飛び込んできたティエリアを抱えこんだまま床に倒れてしまった。

「ぃっ……ティエリア大丈夫?…」
僕がそう言うとティエリアの抱きついてくる力がいっそう強くなった。泣いているのかと思いティエリアの頭に手を回して顔を覗き込んだらいつもの鋭さを失った真っ赤な瞳と目があった。


「………眠れ、ない…ん、だ…」

「え……?」


僕はロックオンの言葉を思い出した。″あいつは強がっているけど本当は脆いからな″という言葉を。

本当にそうかもしれない。他人とはいつも一線を置いていたティエリアだけれど僕らマイスターの中でロックオンだけには気を許していたみたいだ。そう思うと急に悔しいような泣きたいような気持ちになった。


僕だってこんな日は眠れる気がしないさ。


もう一度ティエリアを見ると今度は縋るような目で僕を見た後、ゆっくりと顔を近づけてきた。

そんな顔しないでよ。


なんだかキスされるような勢いじゃないだろうか。いよいよティエリアと僕の距離が数センチになった所で僕は静止の言葉を発した。


「ちょっ…ちょっと待って、」

「俺、は……彼…を守れなかった…」

「え……?」

「今度は、俺が守ると言ったのにっ…………僕、が守るってっ、」


不意に大粒の涙をたたえた瞳に僕はどきっとした。でもティエリアのこんな姿を見ることになるなんて思ってもいなかった。

今の君は適当なんて言葉は頭の中には存在しないかのように何にでも完璧を求めていた頃の君からしてみれば有り得ないだろう。

「…ティエリア」

僕が呟いた声は思ったよりも低くでた。ティエリアは俯いて肩を震わせている。ゆっくりとティエリアの顔を上げて、息をつめて恐る恐る口付けると涙に濡れた唇は潮の味がした。


僕はロックオンの代わり…なんだろうか。

でもそれならそれでいい。
今ティエリアが僕に抱きしめられることを求めているんだったら、僕はそうするまでだ。


僕は唇を離しティエリアをベッドまで運んだらゆっくりとティエリアを押したおしてもう一度できるだけだけ優しく口付けたらその次は割り開かせた唇から舌を差し込み口腔を辿った。

「、んぅ……はぁ…んっ」

「君は、さ…ロックオンともこういう事してたの?」

僕はティエリアの首筋をなぞりながら遠慮がちに聞いた。

「そんなわけっ、ないだろう!」

僕の質問はどうも失言だったみたいだ。絞り出すような声で叫んだティエリアの声は僕に与えられたこの狭い部屋に響いた。

でも良かった。君がもし「ああ、そうだ」などとゆっていたら僕はこの後君をどうしたかわからない。

一度は止まったのに再びティエリアの真っ赤な瞳からは涙が溢れ出した。

「ごめん…変な事聞いて、」

僕はそれだけ言って止めていた手を再びティエリアの肌の上に滑らせた。




2008.03.21



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