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not you less(L×T)


好き。

そう、好きなんだ。
誰にでも優しい彼が。

いつから?

わからない。
気づいたら目はいつも彼を追っていた。そもそも好きという気持ち自体がよくわからないが、今の僕の気持ちを表すのには妙にしっくりくる。

苦しい。

彼が僕以外の誰かに笑いかけるたびに胸を締め付けられるみたいだ。


「ティエリア」

その声で呼ばれると耳が溶けてしまいそうになる。


僕だけを見て。
僕だけに笑って。

いつかその腕で抱きしめて。


そんな事ばかりを考えてしまう。おかしい、だろう。


こんな気持ち、知りたくなかったのに。

ぐるぐるときりのないことを考えているとその悩みの種の張本人は陽気にいきなり話しかけてきた。

「なーに仏頂面してんだよっ」

「別に、いつもどうりです」

「まー最近ミッション続きだからな、あんま無理すんなよ、じゃあな!早く部屋戻って休めよ」


(嫌だ嫌だ、行かないで)

僕は無意識に彼の服の裾を掴んでしまった。


「どうした?」

あなたはそう言って僕の顔を覗きこんできた。

(嫌だ、こんな顔見られたくない!)

「そんな泣きそうな顔すんなよ…」

(抱きしめたくなるだろっ)


「ロック、オン…」

ティエリアはそう呟くと倒れるように俺に抱きついてきた。


「え…?」

(なんだ、このおいしい展開は?)

俺の腕の中にすっぽりと収まるティエリアの頭をできるだけ優しく撫でて髪の毛を掬い上げた。


「……何も、言わないんですね」

「えっ、ああ…いや、ちょっと驚いてて…」

「誰にでも、優しいんですね…」

本人にそんなつもりはないんだろうが上目づかいで見つめられて、俺は目を逸らした。

(可愛いな)

「いや…そういうつもりじゃないんだけど、な」

「じゃあ…」

(他の奴になんかかまわないで)


「嫌い……嫌いだ、あなたなんか…」

「俺は好きだけど…?」

『好き』と言った瞬間ティエリアの身体が電流がはしったみたいに強張るのがわかった。


(わかりやすい奴…)


「好き…なんて簡単に言うもんじゃない!もっとっ…よく考えてから言葉を発して下さい」


「だから、好きだって」

「違うっ、」

(仲間としての好きじゃなくてっ!)

「俺はこーゆー意味での好きだけど」

ちゅ

「えっ…」

一瞬唇に触れたのは彼の唇だった。

(流石に伝わったかな)

みるみるうちにティエリアの顔が耳まで赤くなった。

駄目押しで今度はさっきよりも長く唇にキスをした。目をうっすら開けてティエリアを盗み見ると睫は震えていた。

(あーなんだもう…可愛いなあ)

「…っんぅ」

息が苦しくなったのかティエリアは声を漏らした。

「おっと…苦しかったか?ごめんな…?」

「だっ、大丈夫です」

「なら良かった」

「もう、戻ります…」

「おう…」


(なんだ…いまのはっ)

ティエリアは恐らく赤くなっている顔を手で覆って、できるだけ早足で歩き始めた。

「ティエリアっ」

僕は何も言わずに彼のほうへと振り返った。

「なんかあったら来いよ」

「はい…」





2008.04.04



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