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in oneself(side T)


※ヴェーダ×ティエリア、ティエリア独白






何も知らなかった。


データを通して初めて知った、人間というもの。ヴェーダとそれ以外で構成されていた僕の世界に入ってきた人間たち。



どうして彼らはいつも余計な感情ばかり持ち込んでヴェーダの計画を遂行しようとするのだろうか。心底不思議に思うと同時に苛立ちばかりが募った。



いつでも僕の世界はヴェーダだけだった。


機械のあなたと僕。


この身はあなたの計画を遂行する為だけのもの。ヴェーダは絶対の存在。


(人間のように会話が成立するわけでもない、ただのマザーコンピューター)



そんなことは最初からわかってるんだ。それでも僕にはヴェーダしかないのだから。



いつだって信じていた。


ヴェーダを、そしてヴェーダの指示通りに行動する自分を。



何故ならそれが一番正しいからだ。






(僕はずっと信じていたのに)



トリニティのスローネドライに乗っていたあの女がヴェーダのターミナルユニットに容易く入った事やデータが何者かに改ざんされた事があってから、僕の中で何かが崩れ落ちていくのがわかった。


そして僕はヴェーダに拒絶されたのだ。



データが改ざんされている為なのか、もしくはそれ以外の別の理由があるからなのかもしれない。


でも信じられなかった。

僕の生きる意味、全てはヴェーダあってのものだったからだ。


ヴェーダと直接リンクすることができることもできなくなった僕はこれから先どうすればいいのかわからなくなった。







『命令違反を犯した罰を…』

『そんなの、したっけ…?』

『しかしっ…』

『そーゆーことだ』






僕を庇って傷を負ったロックオンを見るのは辛かった。自分のせいで彼を傷付けてしまった、と思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


なのに彼はいつもとなんら変わらない様子で接してくるから僕は酷く戸惑った。





(…お願い、これ以上僕の中に入ってこないで…)




ヴェーダだけが全てだから、それだけでいいんだ。


僕はもうヴェーダとリンクすることもできないかもしれないけど。


もうヴェーダにとって必要のない存在だとしても、それでもやっぱり信じていたいんだ。





開かないヴェーダのターミナルユニットの入り口の前でどうすることもできなく壁沿いに座り込むと涙が零れた。





2008.05.02



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