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いつか見ていた光の記憶を
信じたくなかった。
ついさっきまであった彼の暖かい笑顔は、今はもうどこにもない。
今度は私が守るって決意したばかりだというのに、守るどころか防戦するのが関の山だった。
彼はいつも、優しかった。
でも、こんな風に彼を思う感情なんていっそのこと取り払ってしまえたらいいのに。
まだありがとうもろくに言ってなかったというのに。
「……ロック、オン……」
呟いた彼の名前は私の頭に響いて木霊した。
「っあ、ふっ…ぅ、そだ……」
この涙を拭ってくれた彼はもういない。
ごめんなさいごめんなさい。
あなたを守ってあげられなくて。
私はいつも彼にしてもらうことばかりだった。
失って初めて彼の存在の大きさに気付かされるなんて、本当に私はどうしようもない。
でも、こんな感情知らなかった。
彼にあうまでは。
今更気付いたってもう遅いのに。
「……ごめん、なさい」
涙で目が霞んで、周りも何も見えなかった。
こんなときあなただったらどんな風に暖めてくれただろうか。自然とそう考える自分に嘲笑した。
もう彼は、いないというのに。
2008.03.16
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