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24.まだ、切りたくないです


ぼんやり空を眺めているうちに、結局一日が経ってしまった。
今日も連絡はなし。
着いたのか着いてないのか、はたまた何やらトラブルにでも巻き込まれているのだろうか。
鳴ることがない電話に自然と落ち着かない心。
……というか、彼のことだから意外とけろりとしている気がする。
電話のことなんて忘れて、向こうで楽しくやっているんじゃなかろうか。
ふとよぎった想像にひどく首を絞めてやりたくなった。
まったく。こんなに心配していたってお構いなしじゃないか。なにが着いたら電話するだ。もうとっくに着いてる時間のくせに。
こんなことイヤガラセとしか思えないじゃないか、私。
なんでまだ待ってるんだろう。
あーあ、バカみたい。
何もせずに、家からも出ずに、いつ掛かったっていいように。
あーあ、なんたること。
待つ女なんて、あーいやだ。
電話なんて放り出して、バーでも行ってお酒でも飲んで、楽しい夜をすごせばいいのに。
あーあ、なんで私そうしないの。
ほんと、バカみたい。
置きかけた受話器をまた掴んでる。
どうしたって手が離れない。
こうしえてる間にも時間は過ぎて、時計の針が回ってく。
すぐに電話が鳴ったなら、きっと、もうこんな苛立ちも不安も全部ぜんぶ流してしまえて、それこそバカな私は彼を許してしまえるのに。
ごめんなさい、遅れましたって、反省の見えない声色で。
そういう彼の電話を待っている。
どうにもならないため息ひとつ、あきらめの色を探し始めた傍らで、彼専用の着信が、呆れるくらいに明るい音で私を呼び止めた。
「遅いっての、ばあか」

これだから、待ってしまうんだ。

そして切際の、



「まだ、切りたくないです」
(嘘つけっ!)






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あきゅろす。
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