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「傍らに在る愛しき人よ。今はただ、その儚き存在を胸に刻み」/ラムアス
「今はただ、胸に刻み…」
何気なく、ぽつり、と呟いた。
それはすぐに宙へと消える。
『随分とまた、心が乱れているな』
「勝手に人の心を読むなよ」
『感じるだけだ』
俺はゆっくりと目を閉じて、意識を奴へと持っていく。
それが奴との対話方法。
『お前が何を思っているかなど…』
「ラムダには関係ないもんな」
そう。お前には一切関係ない。
俺1人の問題なんだ。
ただ1人、自己に浸り
前に進もうともしない。
─知っているから。
1歩進めば、きっと後には
戻れなくなるということを。
『お前はよく物事を複雑に考えるな…』
「そう、かな」
『さぁな』
「無責任だな」
『ヒトの考えなど我には到底理解出来ぬ』
知ってるよ。
俺の思いを一生理解出来ないことも。
「…なぁ、ラムダ」
1歩なんか踏み出さない。
伝える気なんて更々ない。
今はただ、このままで…
「いや、何でもないよ」
絶対に、伝えない。
傍らに在る愛しき人よ。
今はただ、その儚き存在を胸に刻み
─いつかの別れに嘆き悲しまないように。
(手に取るように解るのに)
(お前が何を、思っているか)
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