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若者たち
9
今日は花金だぜ!明日からは三連休だしっ!!ホームルームが終わり、クラスのみんなもどこか浮ついている気がする。ルンルン気分で荷物を鞄に詰め込みながら帰り支度をする。

「いず、これだけ先に持って帰っといて」

「お、ラジャー!部活頑張ってねんっ」

ビシッっと敬礼をして次郎から荷物を受け取る。俺の敬礼には反応を示さず次郎は教室から出ていった…さみしーっす。う・・・重い。多分弁当とか…次郎は見た目に反して真面目だから教科書とか入ってるんだろーな。さーて行きましょうかねぇといつもの二倍の荷物を持ち立ち上がる。


「い・ず・みぃ〜!!」

・・・・・・・・・・うっぜぇのが来やがった…無視無視。心の中でつぶやいていると、背中がズンッと重くなる感覚と同時に鼻をかすめるシトラスのさわやかな香り。

「重い…どけ」

「もー帰るんっしょ?買い物付き合ってよー」

ただでさえ重い荷物を持ってんのに、背中に全体重をかけられて足が少しプルプルする。悲しいことに筋肉があまりついてないんだ…俺は。

「は?無理。吉岡と行けば…っつーか重いんですけど、どいていただけませんかね」

「ヒロちんは女の子とデートに行きました」

「藤原君も行ってきたらいいじゃないですか?君なら皆さんホイホイついて行きますよ?どいてください」

「じゃー木村君もホイホイついて来てくださいよー」

「だが断る!!」

ギャハハッと爆笑する藤原。何をやってるんだ俺は・・・なんだかんだでコイツに乗せられてしまった自分が恥ずかしい。しばらくして笑い止んだ藤原はまだ諦めきれないようで、体重を乗せるのはやめたものの俺の背中に張り付いている。

「なーんでよ?用事でもあんのー?」

「あるよ」

「じゃー駅まで一緒に行こうよ」

「いや、今日は駅行かないし」

ここ数週間、なんだかんだで俺と藤原はよく一緒に下校していた。俺が認めたわけじゃないよ!?俺が帰ろうとするとあいつか勝手についてくるんだ。幸い、それぞれが乗る電車は逆方面なので一緒に帰るといっても駅までの10分程度だ。そういえばコイツ、1年の頃はよく女子と一緒に帰ってんの見たけど最近見ねーなー…まぁ俺と帰ってるわけだけど。

「なんでぇ?」

心底不服そうに聞いてくる。いや・・・別にたかが10分くらいの道のりお前一人で帰れるだろう。子供じゃあるまいし。

「今日はそのまま次郎ん家に行くからだよ。じゃーなっ」

背後からまわる両腕からなんとか抜け出して二つの鞄を肩によいしょっと掛けて逃げるように帰ろうとする・・・が、俺は動きを止めざるを得なかった。今度は右腕が俺の首にガシッと巻きついていた。・・・くるしーんですけどぉ…!

「・・・今度はなんだよ!」

「どーゆーこと?」

少し・・・拗ねてる?口をとがらせて聞いてくる…大の男がその表情はどうかと思うぞ。訳が分かりませんと顔で尋ねてみる。

「狭山クン部活行ってんじゃん」

「あ?あぁ…明日休みだし次郎ん家に泊まんだよ。あいつここから家近いし、一人暮らしだから学校で待つより先に帰ってるほうがいいじゃん」

「何それ!?ハレンチ!!」

間髪入れずに藤原が叫んだ。ハレンチって・・・いつの時代の人間だよ。
金曜日の帰りはだいたい次郎ん家コースだ。鍵を預かって、勝手知ったる次郎の部屋でまず寝る。帰ってきた次郎に御飯を作ってもらって、風呂入ってテレビ見て朝までゲームするってゆーのが定番だ。

「意味わかんねーし。お前だって吉岡ん家に泊まったりするんじゃねーの?」

「女の子の家にしか泊まったことないよ!!」

「てめーの方が十分ハレンチだコノヤローッ!!!!」

一向に教室から出ることができずに、だんだんイライラしてきた・・・目の前のイケメンチャラ男はまだぐだぐだ言っている。妙に焦っているし・・・どうしても俺を帰らせてくれそうにはない。なんなんだよ・・・・・・・・・・あっ

「お前・・・もしかして次郎と仲良くなりたいの?」

「・・・・・・はっ?」

「お前の周りの仲間はイケメンばっかだからな。次郎とも仲良くなりたいんだろぉ〜俺が羨ましいのか?ん?」

藤原は黙って俺の話を聞いている。だがな、次郎はお前みたいなチャラチャラしたタイプは好きではないのだよ。女の子も苦手みたいだし。彼女は奪われても、俺の大事な保護者は死守するぜ!!

「残念ながらジローちゃんを渡すわけには「違う!!」

いきなり叫ばれたので肩がビクッと跳ねてしまった。びっくりした…ど、どーしたー?不審に思い藤原の顔を窺う。両手を握りしめ少し震わせ俺の前に立ちすくむ・・・少し…泣きそうに見えるのは気のせいか。

「違うよ!お、俺が欲しいのは・・・・・・っ!!」

俺の目をじっと見つめていた藤原は、そう言うと動きを止めた。・・・なんだよ?いつもオカシいけど、今のコイツは違う意味でなんだかオカシい。目を見開いて固まっている。

「お…お〜い…?藤原く〜ん?」

頭が変になってしまったのではないだろうかと少し不安になり、ヤツのキレーな顔の前で手を振ってみる。
しばらく手を振り続けると、ようやく藤原はハッと意識を戻した。どこの世界に行ってたんだよお前は…じっと顔を見つめられるが、フラフラと歩き出す。

「あ・・・ゴメンナサイ。ナンデモナイデス・・・ボク、モウカエリマスネ。サヨーナラ・・・」

なんで片言なんですか。あまりにフラフラしているから、机やらゴミ箱やらにぶつかりながら教室から出て行く藤原をハラハラしながら見守った。どうしたんだ急に・・・つーかあんな感じであいつ帰れるのか?事故っても知らねーぞ。珍しく心配なんぞしてみる。


まぁ、休みが明けたらいつもの調子に戻ってるだろ。そっこー藤原のことは頭の中から消去し、俺は今日の晩御飯のメニューの予想をしながら帰ることにした。



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