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若者たち
5
それからはもう最悪だった・・・。

教室中から憐れんだ目を向けられ、始業式に向かう途中ではヤツの仲間から肩をたたかれ「まぁがんばれよ。次があるって」とさわやかな笑顔で親指を立ててきた。自己紹介のときもテキトーに済ませたのに盛大に拍手をされ、隣の席の女子からは飴玉もらった・・・明らかに同情されまくり。
そうだよな…俺だって失恋したての人がいたらちょっと優しくしてしまう。今日一日でクラス全員に名前を覚えてもらったと思えばあんな恥はチャラだ!ポジティブに考えるんだ!!…まぁかなりまぬけな第一印象だろうけど。


ホームルームも終わって下校時間。今日は午前で授業は終わりだ。次郎は午後から部活だし本屋にでも寄って帰るかと財布を取り出し中身を確認。
あの発言以来藤原は話しかけてこない。あれだけの恥をかかされたんだ。正直顔も見たくないほど藤原に対して腹を立ててたし別にいいけど。自己紹介のとき、ニコニコしながら頬杖ついてこちらを見る姿にイラッときた。僕は何も悪くないですよーって顔しやがって。

今も女の子に囲まれて、これから遊びにいかないかと誘われているようだ。お、断ってるよ。女の子はえーっと不満げな顔をしたが、藤原にごめんごめんと頭を撫でられるととたん笑顔になり仕方ないなぁと照れていた。・・・なんだあいつ!どんだけ女子の扱い心得てんの!?見習うべきっ!?・・・いや、あれは顔が良いからできることで俺なんかがやったらドン引きだな。
女子の誘いを断るってことはこれからマナミちゃんとデートかなぁ・・・・・はぁ。落ち込みつつある頭を振って、席を立ち鞄を肩にかける。今日は本屋は止めだ。真っ直ぐ家に帰って夕飯まで寝よう。無駄に疲れたし・・・・

「いーずみっ」

教室を出てすぐ、名前を呼ばれた。すっごい聞き覚えのある甘ったるい声。一瞬立ち止まりかけたが、振り向かずにすぐさままた歩き始める。

「ちょ!シカトしないでよ〜」

小走りで近寄り俺の隣に並ぶ。・・・なんだコイツ。これ以上俺に関わんな。謝る気にでもなったんか?てゆーか今呼び捨てで呼ばれなかった?
近寄るなという気持ちを込めてじろりと見上げる。

「なに?」

「今から暇?」

精一杯の睨みは全然効いてない。俺とは正反対の愉快そうな笑み。

「暇じゃない」

「うっそだー彼女もいないくせにぃ」

・・・・・はぁ!!??何言っちゃってんのコイツ!?おめーのせいでいないんだっつーの!!お前がいなかったら今頃マナミちゃんとラブラブデートだったつーのっ!!
呆然と藤原の顔を見つめると、急に腕を掴まれる。痛いっ!意外と力強いのなーとか関係ないこと考えてたらそのまま藤原は俺を引っ張るように歩きだし昇降口へと向う。

「ちょっ・・・おい!なんだよ離せよ!」

「今からお昼食べいこー。ファミレスでいい?おごってあげるよ」

足の長さが違うからかスピードについていけず、つんのめってしまう。くっそー・・・

「イヤだよ俺帰る。あんたに飯おごってもらっても美味しくないだろーし。離せ」

「あははっ言うねぇ〜」

結構ひどいこと言ったつもりなのにものともしない。ニコニコヘラヘラ。なんなんだこいつは。何考えてんのかさっぱり分からない。

何も言えなくなった俺は、藤原にファミレスまで連行された。
腕は、最後まで掴まれたままだった。


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