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若者たち
4

「じろーちゃん、俺バナナオレ」

「死ね」

相変わらず冷たいね。ジョークじゃんかぁとブーブー言いながら自販機に小銭を入れ、ガコンと落ちてきたバナナオレのパックを取り出し早速ストローを差し込む。隣では次郎がマックスコーヒー買ってる。俺たちは二人とも甘党だ。ブラックとか飲めるカッコいー男になりたいけどどうしても無理だった…次郎は苦いのもイケるみたいだけどね。

「飲むー?」

「いらねーくどすぎるじゃんよ、それ」

「えーウマいのに。ホレホレ〜」

飲みかけのストローを次郎の口にムリヤリ持って行ったら後頭部を思い切り叩かれた…痛い。
二人してジュース飲みつつ廊下を歩いてると通りがかった先生に怒られた。すみませ〜んと軽く流しつつ
新しいクラスへと向う。


2年5組。教室に入る前からギャハハハと騒がしい笑い声が聞こえてきた・・・早速イヤな予感。入るのを少しためらう俺をよそに、次郎はガラリと入口を開けてスタスタ入って行く。
慌てて後を追うように俺も教室内へと足を踏み入れる。おぉ…知らない人がいっぱいだ。当り前なことを考えつつ空いていた席についた次郎の前の席に俺も座る。廊下側の前から三番目、壁に背中をつけて教室内を見渡してみる。
なんだかそわそわとした独特の雰囲気に満ちている。キャァキャァとはしゃぐ女子たち。一人で本読んでる真面目そうなやつ。友人とクラスが分かれたのかキョロキョロと落ち着きのないやつ…後で話しかけてみようかな。
そして・・・窓側の後方、恐らくこれから2年間このクラスの中心になるであろう集団が騒いでいる。
男も女もみんな髪が茶色いし制服も着崩して、見た目だけ見たら俺が仲良くなれそうな奴はいない。まぁ外見は次郎もあっちタイプだから、良い奴もいるかもしれない。
ぼけっと考えつつ集団の中心を見つめる。
華やかな集団の中で一際目を引く男、藤原恵介。机の上に座り、パンツ見えそうな女子に髪の毛を触られながら楽しそうに仲間たちと笑い合っている。
春休み前の忌々しい記憶を思い出しつつ、藤原観察。・・・・・・やはり勝てる気がしねぇ。髪は少しパーマをかけてるのかふわふわでキレイにセットされてるし、シャツは出してボタンも3つ開け、腰パンにも関わらず清潔感がある。甘い笑顔に集団から離れた女子たちも頬を染めてチラチラと視線を向けている。
クラスの中で彼女ができる確率はゼロだな・・・うん。

「……・・・〜ぉぃ、ぉい!!ばかいず!!聞いてんのか!!」

ベチッと鈍い音がして額に痛みが走る。

「いってぇ!ひどい!!何すんのさ!!」

ヒリヒリする額を押さえながら次郎を睨む。が、俺以上に鋭い目線で睨みかえされる。

「てめぇ・・・この俺を無視するとはいい度胸だなぁ・・・」

頭をガシッと掴まれる。あ、このパターンはあれだ、こめかみグリグリの刑だ…容赦の無いこの男にやられると数時間は痛みが残るんだ。

「や・・・ごめんって!無視したんじゃないって!ちょっと別世界に飛んでただけ・・・」

「それを無視っつーんだよ」

にやりと笑って両手をにぎった次郎は、俺のこめかみに拳をあてた。………そして、ねじりが入りました。

「…っっぃぃいってぇぇぇ!!!!!」

いたいいたいいたいいたい!じろーちゃんいつもより長くグリグリしておりますぅ!!マジで容赦ない!鬼畜!!
ギャァギャァ騒ぐ俺たちにクラス内の視線が集中する。もちろんあの派手集団も、なんだなんだと目を向けていた。
あまりの痛みに目立っていることに気づかない俺は次郎の拳をなんとか引き剥がそうと涙目でもがき続けていた。

「あー!」

誰か助けてくれ!思わず叫びそうになったとき、甘ったるい、しかしどこか間の抜けた声が響いた。その声に次郎の攻撃は止みほっと胸をなでおろす。どこの誰だか知りませんがどうもありがとうございました・・・と礼を込めた視線を声の主に向けた。

しかしその声の主とは・・・憎きアイツ。藤原だった。
少し驚いた顔でこちらを指差している……ってか、俺?な…なんだよ、もしかして俺のこと覚えてんのか?まじかよー・・・

二人の距離は教室に入ったときから変わっていない。窓際と廊下側。引きつる俺の顔を見て、驚いた表情が満面の笑顔に変わった。

「あのときはどーもー♪彼女とっちゃってゴメンねぇ。もう傷は癒えたー??」

俺に…否、クラス中に聞こえるように藤原は言ったのだった。

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あきゅろす。
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