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若者たち
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海っ!海ですよ海っ!!やっばい広い!!人多っ!すごいすごい!!
柄にもなくテンションが上がってしまう。なにしろ俺、海に来たのは実は小学校の頃以来なんだから。やっぱりいいね。なんだかんだ言って俺って夏休み満喫してるかも。
砂浜に足を踏み入れたとたん、恥ずかしながら目の前のでかい水たまりと、それに群がる人ごみに感動してついついその光景に目を奪われてしまった。

「泉水ーっ!場所取れたーっ!こっちこっちっ!!」

少し離れた場所で、藤原が両手をブンブン振りながら俺の名前をでかい声で連呼している。てゆーか・・・なんかあそこ雰囲気おかしいんですけど。異様に若い女の子が周りに集まってる気がする。まぁ・・・そりゃそうなんだろうけどさー顔面レベルが異様に高い男が揃ってるんですもんねー群がりますよねぇ。でもそんなんはどうだって良いんだよ。問題なのは俺が今からあいつらの中に入っていくってことなんだよ。絶対周りから何アイツ空気読めよ…的なこと思われんだぜ?いやいやいや、空気読んだうえであそこに行かなきゃいけない俺の気持ちを考えろバカヤロー。

「どうしたの?泉水くん。行こう」

「あ、はい!」

後ろからやって来た和志さんに背中を押されて藤原と吉岡が待っている場所へと向かう。砂浜が慣れなくて少し歩きにくい。あいつら二人は先にバスで出発して場所取り。そんで俺は和志さんと一緒に車で海までやって来た。海パン借りるついでに乗っけてもらったんだよね。

「よっ!さっきぶり!」

「おー。いい場所取れてんな」

「まぁ俺たちにかかればこんなもんよー」

と言いながら腰に手を当てアッハッハと笑う吉岡はすでに髪や体が濡れていた。入水済みみたいです。いーなー俺も早く海に入りたい・・・・と、ソワソワし出した俺の隣に藤原がいそいそとやって来た。ニタニタしてて妙に気持ち悪い。いや、いつも気持ち悪いけどさ。

「い、泉水・・・もうそのTシャツ脱ぐだけで準備終わり?」

「あ?そーだけど。なんで」

「いやいや、特に理由はないですけど。じゃ、とっとと脱いでとっとと海に入っちゃおっか!!」

挙動不審だなオイ・・・なんてこと思いつつも、俺も早く海に入りたかった。藤原の催促に素直に答えてしまうのがなんとなくイヤだけど、言われたとおりさっさと脱ぐことにする。





「おい」

「はいっ!?」

「なに見てんだよ」

「いや、え?俺見てた?」

「・・・・・・・・・・」

見てただろ。俺がシャツ脱いでたたんで仕舞って軽く準備運動してる最中もず――――――っと見てただろ。もうガン見。最初はいつものことだと無視してたけど、こうも見られたらいい加減イライラしてきたんですけど。しかも・・・表情がキモい。締まりが全くない。せっかく顔だけは無駄に良いんだからしっかりしろよな。

藤原に文句を言ってやろうと一歩足を踏み出した瞬間、後ろから誰かに両肩を掴まれてクルリと反回転。目の前に現れたのは、俺の体を回転させたであろう和志さん。つーか、うわぁ…すっげぇ良い体。無駄な肉がないって感じの筋肉質で憧れる。思わずキレイに割れてる腹筋をつんつんしてしまった。

「ちょっ・・・泉水くん、くすぐったいよ」

「だってすげー固いですよ」

「あー…いいねぇそのセリフ」

「へ?」

なに言ってんすか?と頭の上にはてなマーク浮かばせてる俺を無視して、和志さんはニコニコしながら俺の肩に乗せていた手を下へ降ろした。

「やっぱりちょっとサイズ合わないかな。泉水くん細いから・・・ちょっとゴメンね」

そう言って、和志さんは海パンの腰ひもを一度ほどいてもう一度キュッと結び直してくれた。なんか、なんかすげー恥ずかしいっ!!めっちゃ子供扱いされてね?いや、和志さんからしたら十分子供なんだけどさー・・・顔が赤くなるのを感じて、つい下を向いてしまう。俺の背後で藤原がどんな表情をしてるかなんて考えもしないで、ただひたすら恥ずかしくて足をもじもじさせていた。

「はい出来たー」

「あ・・・ありがとうございます」

「・・・泉水!早く行こう!!」

「お、おー―――――・・・・うわっ!!」

藤原に手を取られ引っ張られたと思ったら、逆の手を和志さんに取られて俺たちの動きを止められてしまった。ん?なにこの状況。俺にはさっぱり意味不明なんですが。つーか離して・・・俺早く泳ぎたい。吉岡助けてくれ。目をキョロキョロしながら辺りを探すと、吉岡はここから少し離れたシートにいた女の子と楽し
げに話していた。そりゃないっしょ吉岡くーん・・・


「まだなんかあるんスか?」

それは俺のセリフ。なんでお前が言ってんの。

「あるよ。君にじゃなくて泉水くんにだけど」

あ、そうなんですか。てか、なんか雰囲気おかしい。よく分からんけど、すっごい居たたまれない空気が流れてるんですけど。和志さんすげー笑ってるのに対して藤原すげーむくれてるし。いやー…ナニコレ。俺、どうするべき?

「あ、あの!なんですか和志さん?俺泳ぎたくてウズウズしちゃってるんですけど!!」

その場を和ませようと精一杯明るく尋ねてみる。和志さん、話してると楽しいし優しいけどなんか掴めない。

「うん、ゴメンね。でももうちょっとだけ付き合ってくんない?数分で終わるからさ。あ、藤原くんは先に海入るなり女の子と遊ぶなりしてていいよー」

「はぁ!?」

藤原は叫ぶと同時に掴んでいた俺の手をさらに強く握りしめた。いてーよ。
てかお前もなに気ぃ立ててんだよー。いっつも無駄に明るく無駄に笑ってんだろ。せっかくこんな気持ちいい太陽の下で海で楽しもうってのに、こんな日に限って珍しく腹立てやがって。

「先行ってろよ藤原。すぐ行くから」

「いずみ・・・・」

俺の言葉を聞くと、藤原はとまどいがちにも俺の手を離して「わかった・・・」と小さく呟いてとぼとぼと海へと向かっていった。後姿を見るだけでも肩を落としてしょんぼりしているのがよく分かる。すぐ行くって言ったのに、どんだけ落ち込んでんだよ。
仕方ねーな!あんな暗い藤原気持ち悪いから、和志さんの話聞いたらたっぷり相手してやるとするか!せっかく海来てんのに楽しまなきゃ損だよな!!

そう心に決めて、俺はいつの間にかシートに座って荷物をゴソゴソさせている和志さんの元へと駆け寄った。

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