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若者たち
21
他の男の家とはいえ、泉水とお泊りできると浮かれ気分で参加したものの・・・・・色んな意味で辛かった。


まぁひとつは勉強なんだけどさー・・・狭山クンが恐すぎてマジで俺久しぶりに泣いちゃうかと思った。教え方はウマいんだけど、なんつーの?鉄拳制裁??あんまり出来ないと頭グーで殴られんの・・・本気で。もうね、ほんと必死になるしかないわけよ・・・俺こんなに勉強やったの何年ぶりか分かんないわ。こんなん毎回やってる泉水はほんと尊敬する。これがあと何時間続くんだ・・・ヒロはちょこちょこ泉水に教えてあげたり、漫画読んだりしてる。てめぇ何しに来たんだよっ!?っつーか泉水にだけ教えてあげてるのっておかしくないっ!?



あとは・・・・・まぁ、皆さんお分かりの通り泉水なんだけどね。
なんかもう、ほんとたまんないんですけど。泉水ってば辛いのダメだったんだねー…甘いのは大好きみたいだし・・・どんだけお子ちゃまなんだろー。しっかし本当にあの顔ヤバかったぁ…顔真っ赤だわ汗かいてるわ涙目で上目づかいでさぁー・・・・・あんま想像したら大変なことになるからやめとこ。
あとさあとさ、さっき泉水が風呂に入ってさんだけどさぁもーねー風呂上りの泉水マジでやばいのかわいーの超萌える!!

でもねー・・・ヘコンデしまうことも多いわけでねー…泉水と狭山クンの仲良しっぷりをまざまざと見せつけられて、落ち込まないわけがないよねー・・・。
風呂上りの泉水は髪の毛濡れてて、短パンにでっかいTシャツ着てて鼻血もんだった。俺がそんな泉水の姿にこっそり悶えていると、泉水は冷蔵庫から缶ジュースを取り出し真っ先に狭山クンのところへ向かった。床に座っている狭山クンの足の間に当り前のように座りこみ、狭山クンへタオルを渡す・・・・・・・・もうそれ以上は見たくなかったよっ!!よく考えたら泉水が着てる服も狭山クンのだよねーどう考えても・・・もう親子とか兄弟とかじゃんくてさー…俺には熟年ラブラブ夫婦にしか見えねぇ!!
・・・・・・・・・・・泣きてぇー。




狭山クンのベッドの上ですやすやと眠る泉水を見てため息が出る。時間は現在午前二時。一時頃まで勉強頑張ってたけど、泉水は疲れて寝てしまって俺も一緒に地獄から解放された。ヒロはもくもくと漫画を読んでいる・・・どうやらハマってしまったらしい。狭山クンは参考書開いて机に向かっている・・・自分の勉強してるみたいだ。えらいなー…勉強できるし料理できるし面倒見いいし男前だし・・・・あ、でも顔面レベルは俺の方が上だと思う!!でも顔が良いだけじゃ泉水が振り向いてくれるわけないんだよぉ〜…俺チャラいし。

う〜・・・いつになくネガティブじゃん駄目だってこんなんじゃ!!
じぃーっと狭山クンを見ていると、狭山クンがこっちに気付いた。うわぁ・・・泉水がいないと間が持たない気がする。今のヒロは役に立たねーし・・・・

「なに?」

「・・・へっ?」

「いや、さっきから見られてるから気になんだけど」

気付かれてたのね・・・・・・・・・どうしよう。

「えっとー・・・・・・・・・狭山クンって泉水と仲良いよねー…異常に」

「別に異常じゃねぇよ。俺の性格上こいつの面倒見ずにはいられないだけ」

それだけ?
確かに泉水はかまわずにはいられないタイプだけど・・・本当にそれだけ?それ以上の感情は持ってない?毎日あんな癒し笑顔見て、しょっちゅうこんなかわいい寝顔見てたら・・・・たまんないっしょ?俺なんか一回の笑顔見ただけで好きになっちゃったんだよ?

下を向いて何も言えなくなってしまった俺を見て、狭山クンが口を開いた。

「あー―・・・・・まぁ、安心しとけよ」

へっ?いきなり何?今の俺に安心できる要素は皆無だよ??俺がわけが分からないという顔をしていると、狭山クンはバツが悪そうに言った。

「いずの・・・いや、泉水のことはそーゆー風には思ってねーよ。なんつーか…まぁ親心みたいなやつだって思っといて」

言われていることがしばらく理解できなかった。
・・・・そーゆー風にってのは、そーゆーことだよね?・・・恋愛感情とかの、そーゆーのでいいんだよね?ってか、安心しろってことは…俺の気持ち狭山クンにバレバレってことだよね?・・・・・うっわ!それってめっちゃ恥ずかしいんですけどっ!しかもその言い方って、俺が狭山クンに嫉妬してたみたいじゃんっ・・・・・いや、実際めっちゃくちゃ嫉妬しちゃってたわけだけどさー。そんなんまで狭山クンにバレちゃってたなんて…どうしよう俺恥ずかしすぎて顔赤くなってる気がするっ!!

「いや・・・・あのー…バレバレナンデスネ・・・」

「なんで片言なんだよ。見てりゃー分かるし」

「そっかー…・・・あはは」

誤魔化すように笑い、ガクリと肩を落とす。
でも・・・・ライバルじゃないって確信できて安心した。ほんっっっっと良かった!!狭山クンが本気出したら…いや本気出さなくても絶対に勝ち目なかったもんねっ!?

「あー・・・でもさ」

狭山クンがまた口を開いた。今日割としゃべるね?こんなにいっぱい普通に話したの初めてかもしんね。

「なに?」

「恋愛感情は持ってないけど泉水のことはそれなりに大事にしてんだよ・・・だからさ、お前にだけは泉水をやりたくねーんだわ」


・・・・・・・・・・・・・・・・なんとまぁ。

それだけ言うと、狭山クンはまた参考書に目を戻してしまった。俺はというと、これまた固まって動けない。やべー…ライバルなんかより強力みたいだ・・・でも、俺なんか力が湧いてきてる。さっきまでのネガティブ恵介はどっか行っちゃってるっ!!

「・・・・・・・分かった。俺、頑張るっ!!お母さんに認めてもらえるように超頑張るからっ!!」

勢いよく叫ぶと、狭山クンの近くに置いてあった空き缶を思いっきり投げつけられ、見事に俺の額に命中した・・・・いてぇ。
すると、漫画を読んでいると思っていたヒロがブフッ!と噴き出した・・・・・お前聞いてたのかよ。

「せめてお父さんって言ってやれよ恵介ー」

笑いながら言うヒロに、今度はクッションが思いっきり投げつけられた・・・狭山クンやっぱりこえー。

でも・・・・うん。なんだか俄然やる気が出てきたかもしんない。こんなに騒がしくしているのに全く起きる気配のない泉水をもう一度見る。
かわいい。すっごいかわいい。できるなら布団にもぐり込んでギューッて抱きしめてあげたい。今やったら俺の命が危ないからやんないけど・・・頭を撫でるくらいなら許してくれるだろう。柔らかい髪が指をするすると通り抜ける・・・ヤバい、にやけてしまう。明日も一緒に勉強頑張ろうね。と心の中で泉水に話しかけたらなんだかウトウトしてきた・・・泉水お気に入りのでっかいクッションに体を沈め、俺も眠りにつくことにする。



俺、頑張るから。いっぱい時間かかるかもしんないけど、絶対泉水を振り向かせるから。覚悟しててね。




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