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若者たち
2
あれから三日。俺は生きている。
もちろん心はまだまだズタボロだよ。そりゃもうボロ雑巾のごとく。昨日の英語のテストなんて過去最低点だったぜっ。勉強なんてやれる精神持ち合わせてなかったからな。
それでも明日から春休み。それが終わったら2年に進級だ。気持ちを切り替える大チャンス。俺は新しい恋をするんだ!
そんな俺の小さな決意を踏みにじる一言。

「マナミちゃんと藤原付き合いだしたらしいぞ」

「・・・・・・」

俺の前の席に座り、メロンパンを頬張りながら雑誌をパラパラとめくる友人。

「まぁあんだけ可愛い子とお前が付き合えたことだけでも奇跡だもんな。童貞は捨てられなかったけど。ぷぷ」

うるせーよ。春休みに捨てる予定だったっつーのっ!
けど、学年でも可愛くて有名だった彼女と付き合えたことは確かに奇跡だった。
なんたって俺、木村泉水は超ふっつー。顔も成績も可もなく不可もなく。背も…あと5センチは欲しいところ。地味でもないし派手でもない、特記事項は別にありませんって感じ。
対する、彼女を奪ったあいつ。藤原恵介。
顔もスタイルもモデル並み。背も180超えでマンガかってくらいのルックス。遠目から見てもキラキラまぶしいオーラ全開で、俺は悔しさや嫉妬の気持ちも湧いてこないくらいの完敗っぷり。
彼女が途切れたことがないらしいと近くの席の女子が噂していたけど、まぁあの見た目ならそうだろう。正直自分はあの軽い喋り方と雰囲気は好きになれない。
けど、俺が好きだったマナミちゃんが好きになったんだ。寂しいけど、彼女の幸せを願うしかないんだ。

ふぅ…と、心の中でカッコいいこと言ってみてため息をひとつ。


「なにキモい顔してんだよ」

「・・・うるせっ!人が物思いに耽ってるときに邪魔すんなっ!っつーかキモいって言うなっ!!」

食べる気にもならず箸でつついていた俺の弁当から、卵焼きをつまんで口に入れる目の前の友人。狭山次郎。何がきっかけかはもう忘れたけど、入学当初から話しが合ってなんだかんだでもうすぐ友人歴1年。口は悪いし性格も偉そうだけど、俺が落ち込んでるとよく俺の大好きなコーヒー牛乳買ってくれる。かわいいやつめ。

「だってキモいし。キモい顔ずっと見てたくないからなぁ…仕方ねーから春休みは存分に遊んでやるよ」

「キモいキモい連呼すんな。…お前部活あんじゃん」

「毎日はねーよ。一日中あるわけでもねーし。それともなんだ?俺様とは一緒に遊べねーっつーわけ?あ?」

至近距離で睨み効かすんじゃねーよ!次郎もなかなかの男前だから迫力がある。入ってるバスケ部でも結構活躍してるらしい。見たことないけど。

「あー…すみませんでしたぁ。どうぞこんなキモい俺と遊んでやってください、じろーさま」

「…言い方が気に食わないけどまぁ良しとする。今日帰りマック行くぞ。おごってやる」

弁当もあんま喉通らないんだけど…そんなごついもん食わせる気かよ。まぁこいつなりに元気付けさせようとしてるのが分かるから付き合うけどね。


明日から春休み。次郎のおかげで2年に上がる頃には俺も完全復活できる気がする。


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あきゅろす。
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