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若者たち
19

「……っなぁぁぁぁぁぁっっ!!!?」

「・・・・うっせー」

突然の叫び声に、隣にいる次郎が片耳を押さえながら俺を見やる。やばいやばいっ超やばいっっ!!最近いろいろありすぎてすっっかり忘れてたっ!!

「次郎っっ!!来週から中間だよっ!?」

「・・・・・・で?」

…でって!?それだけ!?もっとなんかあるでしょーよぉ!イスに浅く座り、長い足を放り出してポッキーを10本くらいまとめて食う次郎・・・口の中がもっさりする感じが好きらしく、こいつはいつもこんな食い方をする。俺は一本ずつ小刻みに食う派なんだけどね。

「俺べんきょー全然してねーよっ!どうしようっ!?進級して一発目なのにっ!!」

かーちゃんに怒られる!!と嘆く俺を見ながら、口ん中いっぱいにしてボリンボリンとポッキーを食い続ける次郎・・・男前が台無しですよ。っつーか余裕そうですね。こいつ顔がいいくせに勉強もできるんだよ・・・テストとか上位常連だし。
まぁ、そんな頭の良いじろーちゃんと親友やってる俺には毎度おなじみのお願いがあるわけなんですが。パンッと手を顔の前で合わせて次郎を上目づかいで見上げてみる。

「じろー様っ!いつもの合宿お願いしますっ!!」

「・・・・・・見返りは?」

ポッキーの箱をつぶしながら俺の顔も見ずに言う。食い終わるのはえーよ・・・まぁあんだけ一気食いすれば当然か・・・・・・・見返りかー。

「ポッキー・・・買ってあげるよ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・・黙って見ないでっ目を細めないでっ!こわいよー!だって何も思いつかないんだもんっ!!

「・・・・・・・今回は何がヤバいわけ?」

えっ?いいのっ!?だってポッキーだよ!?俺びんぼーだから一箱しか買ってあげないよ!?さすが次郎だなぁー器がでかいっ!
えへへーと笑いながら次郎がつぶした箱を取ってゴミ箱に捨てにいった。俺なりの感謝の気持ちです。

「えっとー…一番ヤバいのが数学かな。あと英語とー歴史とー「もういい分かったボケ」

ひでー・・・でもいい!久々の合宿だしなぁ…次郎さん毎度毎度お世話になります本当に。はー・・・・でも次郎スパルタだからなぁ・・・・・・・・




「なになになになにっ!?合宿ってなーにさっ!?」

・・・・今はお前の出る幕じゃねーよ。っつーかいつからそこにいたんだよ・・・お前はいつも通り教室の端っこでギャーギャー派手仲間と騒いでろ。いつものごとく華麗に無視をしつつ次の授業の準備をする。

「俺も気になるっ。合宿って?どっかに泊まり込みでもすんの?」

あ、吉岡もいたのか。

「そーなんだよ。テスト前になったら俺がじろーん家に金土日の二泊三日で勉強教えてもらうの。こいつちょー頭いいから」

「ちょっ!俺には答えてくれなかったのにっ!!しかも超にこやかっ!!泉水のバカッ!!」

へぇー!すげーなぁ!!とカラカラと笑う吉岡の隣で藤原のアホは地団駄を踏んでいる・・・・子供か…子供だな。

「じゃー今週末から?狭山も大変だな」

「別に・・・もう慣れたから。こいついつまで経っても自力で勉強できねーし」

いてっ。次郎はフンッと鼻を鳴らして俺の頭を小突く。でもこの合宿はマジでいいんだよー…これのおかげで毎回全教科30…いや40点は稼げてるね。じろーさまさまだよ。
心の中で次郎へ頭を下げていると、さっきのさっきまで無駄に騒いでたヤツの声が聞こえなくなっていることに気づく。逆に気持ちわりーんだけど・・・と、藤原の方へ顔を向けるとブスッとふてくされた表情でこちらを見ていた。

「なんだよてめーその顔は」

「べっつにー」

はっ!?何コイツ!!相変わらずムカつく奴っ!!人が珍しく話しかけてやったらその態度ですかーそーですかー。

「あっそ」

一言つぶやいて次郎の方へと顔を戻す。

「・・・・・なんだよっ!?もっと気にしてよ泉水のバカッ!!」

あーうるせっ。っつーか無駄に人をバカバカ言いやがって・・・お前にだけは言われたくないんだよ。吉岡は何も言わずに笑ってるし・・・・放任主義かよ。もっと叱ってやんなきゃこいつ調子乗るぞ…あ、もー遅いか。



フルフルと震えてこちらを見つめ、うーうー唸ってた藤原がいきなり右手をビシッと上げた。

「はいっ!!狭山クンっ!!」

「・・・・・・・・・あ?」

いきなり呼ばれた次郎がいつもより目を開いて驚いた顔をしている・・・うわぁ珍しい。あんま表情変わんないからなー…とマジマジと顔を見つめると、すぐに元の顔に戻し俺を横目で睨んできた。思考がバレバレみたいです。

「なんだよ」

「お・・・・・・俺もっ…俺も合宿に参加させてくださいっ!!」

「「はぁっ!?」」

俺と次郎の声が重なった。
いきなり何言ってんだコイツは?藤原は手を下すと、自分の髪をいじりだし焦った様子で言ってきた。

「いや〜…・・・ほら、俺ってばマジで頭悪いしー…今回のテストとか赤点の勢いだと思うんだよねぇー。そんでさーどうせだったら皆で助け合った方が自分的に身につくんじゃねーかなー…って・・・・・思いましてですネ・・・ハイ」

はっ!?マジで無理!!ぜってー無理っ!!っつーか次郎と俺の仲良しルームにお前が入り込む隙は1ミリもねーよっ!!大体次郎が許すわけが・・・

「別にいーけど」

えええええぇぇぇぇぇぇっ!!??
じろーちゃん本気っ!?頭打ったんじゃねっ!?呆然とする俺をよそに、藤原はパァッと顔を輝かせ次郎の両手を取ってブンブン振っている。次郎が心底ウザそうなんだが・・・・・・・・つーか、マジで?マジでこいつも来んの?
大丈夫かよー…とうなだれていると、黙ってこちらの様子を見守っていた吉岡までも先ほどの藤原同様に手を上げた。

「恵介ばっかりずりーよ。俺も参加しますっ!」

にっこりと宣言すると、次郎の顔が少しだけ青ざめたように見えた。今日はレアな次郎がいっぱいだなー・・・・・



とりあえず、今度の週末に真面目に勉強ができるのかどうか・・・俺は今のうちにかーちゃんに叱られる覚悟でもしておこうかと思う。


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