若者たち
18
店を出てからは二人でいろんな所をまわった。
靴屋行って帽子屋行って…藤原はそこでハット買ってた。ハットって！！そんなんいつかぶるんだよ。俺がかぶったら完璧にいい笑いもんだな、絶対。
んで、俺が食べたかったからクレープ食べて、CDショップ行って本屋行った。俺はここで小説を一冊買った・・・・こんな店回ったのってかなり久し振りかもしんねー…歩き疲れたけど気分はそんなに悪くなかった。どこに行っても藤原のキラキラオーラのせいで注目浴びまくりだったけど、時間が経ったら気にならなくなるもんなんだな。街を歩いてるとたまに女の人が藤原に声かけてきていちいち足を止めなきゃいけないのがウザかったけど・・・・こーゆーのはイケメンも大変っぽい。
その後はゲーセン行って適当にゲームやってた。藤原がプリクラ撮りたいとか言い出して断固拒否したのに、無理やりプリクラコーナー連れていかれた。まぁ今は男だけでは入っちゃいけないみたいで免れたけどね…写真嫌いなのにプリクラとか絶対無理っ！！
「泉水顔つかれてるねー。どうする？もー帰る？」
確かにちょっと疲れたかもしんね。足がなんかダルい・・・・運動不足ですか。そうですか。
「んー・・・そうだな。今何時？」
携帯で時間を確かめようとポケットをごそごそと探る・・・・・・・ん？あれっ？？
「いずみんどしたのー？」
誰がいずみんだっ。徐々に焦りの色を見せる俺を見て藤原が聞いてきた・・・・・いやぁー…マジでか。
「あー・・・・・・・携帯なくした」
いつの間にやら俺の携帯はポケットの中から消えていた。今日は手ぶらで財布と携帯だけだったからなー・・・どっかに置き忘れてきたとかかなー…
「はっ！？マジでっ！？ヤバいって！！」
ビクッ！！いきなり声出すなって！お前今日そんなんばっかだぞ！！っつーかなんでお前が慌ててんの？なくしたの俺だからね。
「なんで泉水そんなあっけらかんとしてんのさ！個人情報満載なんだよっ！！どっかに忘れてるかもだし、探しにいかなきゃ・・・っ！！」
おぉ・・・そ、そうだな。あんまり携帯に執着してないもんだから忘れてたけど、他人のデータとかいっぱい入ってんだもんな。いかんいかん探さねば・・・・少し藤原に関心していると、いきなり手首を取られ引っ張られる。
「うわっ・・・」
「とりあえず今まで寄ったとこ回るよっ！！」
小走りで街中を進む藤原の手は、俺の手首から手のひらへと移っていたんだけど…俺より焦っている顔を見たら何も言えなくなってしまった。
「泉水ー最後に携帯さわったのっていつ？」
「スタバでお前に電話したとき」
「・・・・・・・・そっかぁ・・・あはは」
目をきょろきょろと泳がせる藤原。別にもう怒ってねーよ…俺も悪かったんだし。
今日行った場所はほとんど探したけど俺の携帯はどこにもなかった・・・・あとはマックと最初に寄った店。あのベルト欲しかったなー・・・またなんかバイトでも始めようかな。
「とりあえず先にあのショップから行こ！マックは最後の砦ねっ」
こいつ・・・・意外としっかりしてるかもしれない。チャラいくせに…俺こんなときなんも考えらんないし、最後には多分あきらめる。
二人で店に入り、藤原が真っ先にレジへと向かって暇そうにボケっとつっ立った店員へと話しかけた。俺は黙って様子をうかがっていた。
しばらくすると、店員が店の裏へ行きすぐに戻ってきて、藤原が何かを受け取る・・・・・・・・あっ。
「泉水っ！よろこべ〜っ！！けーたいあった！！」
「えっ・・・」
満面の笑顔で俺のもとへ駆け寄ってくる。あー…いつでもまぶしいヤツだな、お前は。どんだけ嬉しいんだよコイツ…俺の携帯だよ？見つかったの。良かったなーとニコニコしながら、ポンッと俺の手を取って携帯を渡してきた。あれ・・・・・？
「藤原、これ俺のじゃない。機種は一緒だけど俺ストラップとか着けてないし」
せっかくあったと思ったのに・・・申し訳なくなってしまった俺に、藤原はさらにニッコリ笑った。
「それは泉水のだよ。中確かめてみなー？そのストラップは俺からのプレゼントです。てか今日付き合ってくれたお礼？ちなみにおそろいっ♪」
じゃ〜んと自分の携帯を俺の顔の前に突き出してくる……茶色い革のストラップが着いていた。俺のには・・・・色違いの白…シンプルだけどシャレてる。
男同士でおそろいってどうなの・・・っつーかお礼ってなによ。俺はただ脅されて付き合ってやっただけじゃんかよ・・・・・・・・・・・・・・・でも、まぁ。
「しょーがねーから見つけてもらった礼に貰っといてやるよ・・・・・・ありがとな」
後半は楽しくないこともなかったしなーと言って笑ってやると、藤原はポカンとまぬけな顔をして…しばらくすると口を手で押さえて後ろを向いてしまった。
なんだよ・・・やっぱり変なヤツ。
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