ターコ。それは修羅場
手を握りあって嬉しそうにしている二人は一通りワーワー言うと落ち着きを取り戻したように私に向き直った。
「名前先輩!紹介しますね。私と同じクラスの境目ルナちゃんです」
「境目ルナです!よろしくお願いします」
「ルナちゃん、こちら名前先輩。昨日私がお世話になった…」
「あ、先輩が…。コナツがお世話になりました!」
「いや、私なにもしてないしね?私でよければ仲良くしてね」
お茶を持っていない方の手を差し出せばルナちゃんは嬉しいですと言って両手で私の手を握った。
「コナツ、さっきの話聞いてよ!」
「聞かせて聞かせて!」
二人が向かい合ったので私はあ、と思い二人に声をかけた。
「私、教室あがるね?」
「えー、先輩も話し聞いてください!」
「ルナちゃん、無理言っちゃだめだよ」
「先輩にも幸せを分けてあげたいの!先輩、お願いします」
「うん、じゃあルナちゃんの幸せ、分けてもらおうかな?」
いや、私何言ってんの。
幸せを分けてもらおう?
今から聞こうとしてるのはルナちゃんと、…シカマルの話。
分かってるんだ、分かってるのに足は動かない。
「昨日の夜に電話したの。そしたら先輩出てくれて、ちょっと寝ぼけてたんだけどその時の声すっごい可愛かったんだ!」
「電話出来たの?!やったね、初めてじゃない?」
「うん!嬉しすぎて泣きそうになっちゃった。それで今日一緒に学校行きませんか、って言ったら断られたんだけどね、今朝玄関のドア開けたら門の前に先輩立ってたの!朝から泣いちゃったよー」
「キャー!素敵ね」
ああ、やっぱり聞くんじゃなかった。
シカマルは私の知らないシカマルになって行く。
私が知らないうちに携帯のメモリが増えて、連絡とって、仲良くなって……。
なんか気持ち悪くなってきたかも。
手にもっているお茶を一口飲んだ。
「それとね、さっき先輩と分かれるときに今日のお昼一緒に食べる約束したんだ!」
「一緒にご飯食べるの?もうすっかり彼女だね」
「そうかな…」
えへへと照れたように笑ったルナちゃんは恋する女の子だった。
そんな彼女がパッと顔を上げて目を輝かせた。
視線は私のうしろ。
「先輩!」
「名前」
シカマルが呼んだのは私の名前で、走り出していたルナちゃんの足を止めさせた。
ルナちゃんは一瞬悲しそうな目をしたように見えたがまたニッコリとした。
「先輩、ルナもいますよ?」
「……小さくて見えなかった」
「嘘だー!ルナ、名前先輩と少ししか違いませんよ!」
「そうか?オレにはお前が幼稚園児ぐらいに見えるぞ」
「ひどいよー、先輩!」
ルナちゃんはシカマルの前へ駆け寄り、そんな彼女を見て私の隣ではコナツちゃんがクスクスと笑っていた。
「あ、いたコナツちゃん!大蛇丸先生が呼んでるよー」
「いけない、忘れてた!課題プリント出さなきゃ…」
ごめんね、ルナちゃん。またあとでね!
コナツちゃんは走って校舎に入ってしまった。
気まずすぎるよ。シカマルとルナちゃんも校舎へ入って!いや、私が入ろう。
考えがまとまって右足を踏み出そうとした時だった。
「あー…、名前。昼、空いてるよな?」
「…え?」
「話したいことがある」
「先輩!今日のお昼はルナと一緒だってさっき約束したじゃないですか!」
「またにしてくんねーか?オレは名前と話しがしたいんだ」
「楽しみだったのにっ……!!」
キッ、とルナちゃんは私を睨んで目に涙を溜めた。
急な展開に頭が追いつかない。
「何で、ルナが先に約束したのに…普通彼女優先でしょ!」
「ったく、めんどくせー。オレがお前じゃなくて名前を選んだってだけだ」
「…っ……。名前先輩も何とか言ってくださいよ!」
「あ、いや…。シ、カマル私とならいつでも、話せるでしょ?今日はルナちゃんと」
「いつでもだ?オレを避けてんのはどこの誰だよ?お前とは話さなきゃなんねーと思ってたんだよ」
拒否権はねぇからな。
シカマルはそう言って自販機でお茶を買うと上履きを引きずるようにして歩きながら校舎へ入った。
残された私とルナちゃんは目を合わせた。
途端にルナちゃんはまた私を睨んだ。
「先輩とは仲良く出来ない。シカマル先輩に近付かないでよ」
チャイムが鳴る中、ルナちゃんは走って行った。
そんな彼女とは反対に私は近くのベンチに腰掛けた。
また遅刻だ…教室入りづらいってば。
ターコ。それは修羅場
(あら、名前じゃないの)
(……カカシ先生)
(俺は別に何も見てないよ)
(その口ぶり全部見たでしょ)
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