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ターコ。それは早起き




ご飯を食べてシャワーを浴びて歯磨きをして二階に上がった。


兄貴の部屋のドアをノックするとはい?と声が返ってきた。


開けるよと一言言って開ければ机に向かう兄貴がいた。




「あ、ごめん。終わったら言って」

「いーよ。もう終わったからさ。お前の部屋で話そうか、お前寝るだろ?」

「いや、寝ないし」




兄貴のベッドにどすんと座り、ひよこの形をしたクッションを抱くと、下に響くと怒られた。


兄貴は掛けていた眼鏡のブリッジを押し上げて、場所はそのままで身体をこちらに向けた。




「そりゃシカちゃんも男だもんなー」

「なに」

「いや、彼女くらい欲しくなるって話。俺がお前らの歳の時は女のことばっか考えてたぜ?彼女がいるやつがかなり羨ましかった」

「そんな話しどうでもいいんだけど」

「そう言うなって。俺が初めて付き合った子は可愛かったなー」

「え、あの顔はいいけど性格悪い人?……私嫌いだった」

「俺には可愛く見えたんだよ。まぁ、お前を睨みつけたのを見た時はどうしようかと思ったけどな」

「あんな人と付き合ってた兄貴はすごいと思った」

「考えてみりゃ俺別にあの子のこと好きじゃなかったしな」

「なのに付き合ってたの?私怖い思いいっぱいしたのに…」

「あの時は“彼女”ってもんが欲しかったんだって。それに可愛い顔は自慢になったし」

「兄貴も性格悪いね。そんなだと思わなかった」




うるせーと笑った兄貴はだからさ、と落ち着いた声で言った。




「シカちゃんもそんな感じかもしれないだろ?」

「……ないよ」

「ん?」

「シカマルに限って、そんなことない」

「だからシカちゃんも男なんだって」

「そんなの知らん!男男言うな」




ひよこクッションを兄貴に投げ付けて部屋を出た。


シカマルは彼女が欲しいってだけで初めて会った子と付き合うなんて、そんな考えしてないはずだよ。


でもそうじゃなきゃシカマルはその子のことが好きってことだよね……。


もう考えるのは止めよう。


頭痛くなってきた。





次の日はいつもより早く起きて、早い時間に家を出た。


それが悪かったのか見たくないものを見てしまった。


シカマルとその隣を歩くシカマルより頭一つ分背の低い女の子。


茶色く真っ直ぐな長い髪が揺れていた。


微かだが、見えたその子の顔はとても可愛かった。


引き返そうと思ったが学校はすぐ目の前にある。


てのひらをギュッと握り締め、並んで歩く二人の横を走り抜けた。


足が震えるし口の中もカラカラに渇いた。


ほんと、朝から最悪……。


飲み物を持っていないことに気が付いてそのまま自販機に走った。


自販機前の水道には昨日出会ったばかりのコナツちゃんがいた。




「おはよう、コナツちゃん」

「あ、名前先輩!おはようございます」

「昨日はメールごめんね?」

「いいえ!先輩早退されたし体調が悪いのかなと思ったので。大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう。で、ホースなんか持ってどうしたの?」

「私今週ここの花壇の水やり当番なんです」




生物部なんですよ、私。と言ってコナツちゃんは蛇口を捻った。


シャワー状の口から出た水はコナツちゃんの手により、花壇まんべんなく撒かれていく。


自販機でお茶を買ってコナツちゃんに振り返る。




「何が咲くの?」

「ユリです。もうすぐ咲くと思いますよ。見に来て下さいね?」

「うん、見に来るよ!綺麗に咲くといいね」

「はい!」




そろそろ教室に上がろうかと思ってコナツちゃんに声を掛けようとしたらパタパタと足音が聞こえた。




「コナツー!」

「ルナちゃん!おはよう」




現れたのはシカマルの彼女だった






ターコ。それは早起き
(ちょっとコナツ聞いてよ!)
(うん、先輩のことだよね!)

((あー…。二人は友達だよね?))











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