ターコ。それは家族
「おい、飯だって何度も言ってんだろ」
ドンドンとドアを叩かれてうるさいな、と思っていると返事もしていないのにドアをガチャっと開けられた。
「なんだよ、この空気!ほんと暗いって……」
気味悪いわ、と言った兄貴は電気をつけた。
「おーい。生きてる?母さんが料理が冷めちゃうじゃない、つって怒ってんぞ。早く食え」
「いらない」
「あのねぇ、何があったか知らないけど引きずんな」
「ほっといてくれい」
「お前びょーき?やばくね、まじで」
そう言いながら兄貴はあまり使っていない勉強机の椅子に座った。
机の上の雑誌や漫画に手を伸ばしたと思えば椅子をくるくるし始めた。
「俺を巻き込むなって」
「勝手に入って来てんでしょ」
「そうだっけか?」
「そーゆーのほんとうざいよ」
「……。で?今回は何があった?」
兄貴に話すべきかそうでないか、悩んでいると兄貴が笑った。
何笑ってんの?そう聞けば更に可笑しそうに笑った。
「いや、お前またあの時みたいに眉間にシワ寄ってるぞ。お前の話し聞いて俺が意見言えるかどうか、そんなの関係ないと思わね?最終的に答え出すのはお前だし。俺的には話すだけでも少しは気持ちの持ちようが違ってくると思うけどな」
……まただ。
兄貴の言葉が正しいと思える。
何だか悔しいけど話さないと、と思ってしまった。
「彼女、できた」
「……お兄さんは許しません。考え直せ?」
「ばか?私にじゃない」
「た、ただの悪ふざけだっての」
「顔がまじだったよ」
「いちいちうっせーよ。続き話せ」
妹にレズ疑惑を勝手に掛けたくせに偉そうに。
そうは思いながらも今日のあったことを登校から帰宅後、いのが来たことまで隅々話した。
へぇーとかふ〜んとか相槌をうっている兄貴はこんなにも悩み苦しんでいる妹の話しをニヤニヤしながら聞いていた。
「なるほどね。じゃ、飯食え。後でまた話そうぜ」
「……わかった」
立ち上がると背中を押されて部屋を出た。
兄貴を振り返るとにこっとしていて気味が悪かったので階段を一気に下りてリビングのドアを開けた。
母さんがキッチンから顔を覗かせて遅いと一言。
ごめんなさいと言って手をキッチンで洗って椅子に座った。
「辛かったら溜め込まずに誰かに吐き出した方がいいわ」
「え?」
「ストレスはお肌にも良くないしね」
あんた最近ニキビ増えた。
そう言って笑う母さんに少し笑えた。
失恋してしまった今、一人じゃなくてよかったかもしれない。
ターコ。それは家族
(父さん帰ってくる前に寝なさいね)
(…そうする)
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