ターコ。それは右隣り
次の日、予定していた通りに朝早く起きてシャワーを浴びた。
髪をばっちりドライヤーで乾かしてご飯を食べた。
いつものように兄貴より遅くに家を出て登校(しょー君と同じタイミングで家を出た)した。
教室に着けば皆寄ってきて「大丈夫か?」「元気になったの?」と声をかけてくれた。
あまり話したことのない子も心配してくれたみたいで、「大丈夫だよ、ありがとう」と言えば「気をつけてね」と言ってくれた。
久しぶりに感じる授業に怠いと思いながらもなんとか踏ん張り時間が経っていた。
昼食を食べ終わって、休んでいたとこのノートをいのに借りて写していた時、珍しくサイに声をかけられた。
「忙しいところごめんね。ちょっといいかな」
そう言って微笑んだサイに頷いてサイの横を歩いた。
そんなことがあり私は今、前のメイン黒板に近いドアの鍵が壊れている空き教室にサイと二人きりだ。
何も会話がない中、サイは変わらずニコニコしている。
「元気になったの?」
「うん」
「心配したんだよ。ボクもお見舞いに行こうと思ったんだけど名前もしっかり休んだ方がいいと思って止めておいた。…寂しかった?」
今日のサイはよくしゃべる。
「ありがとう。そうだね、皆に会えないし寂しかったよ」
「ボクに会えないからじゃなくてかい?」
「え?サイもだよ」
今日のサイはよくしゃべる上にどことなく強気。
「名前はボクが言ってる意味わかってる?」
「わかってるよ!私が休んでて寂しかったんでしょう?」
「えっとー…、それが何でだかわかる?」
「友達だから」
「違う」
「隣の席だから?」
「半分は当たりかな?でもそんなことじゃない」
「じゃ、何で?」
そう言えばサイは視線を窓の外から外しこっちを見た。
チラッとサイが時計を見て溜め息をつくと、ヘラっともニコっともせずに、真顔で私と目を合わせた。
「君が好きだから」
昼休み終わり五分前、授業開始五分前を意味する予鈴のチャイムが鳴った。
驚きで固まったままの私にサイが近づく。
「ボクは彼と違ってそんなに長く待てる人間じゃないよ」
そう言ってもう二、三歩、歩み寄ってきた。
サイが教室を出て行ったと同時に頭の中の整理がついた。
『寂しかったんでしょう?』
『何でだかわかる?』
『君が好きだから』
"サイは私のことが好き"
―――――サイにキスされた額が熱くなった
本鈴が鳴って、既に授業が始まって数十分経っている教室に入った私は皆の視線を集めた。
「名前、調子が悪くなったのか?」
「いや、大丈夫。遅れてごめんなさい」
イルカ先生に言えば「無理するな」そう言われて席に座らされた。
右隣りにはサイが座って、何事も無かったかのようにシャーペンを握っている。
思い出すと顔が熱くなるのがわかって机に伏せた。
そのまま寝てしまったようでショートホームルームで先生に起こされた。
ぼーっとしているとホームルームは終わったようで皆、部活に行ったり帰宅したりとしている。
「また明日ね、名前。じっくり考えて?良い返事を待ってるよ」
そう耳元で言ったサイに小さく頷くことしか出来なかった。
"ダン"っと大きな音が聞こえ、びっくりして音のした方を見ると後ろの黒板にグーを押し付けている、………シカマルがいた。
「帰ろうぜ、チョウジ」
「あ、うん」
静まり返った教室にシカマルの低い声が響いた。
自分の鞄を持つとさっさと教室を出ていくシカマルに気を取られていて誰ひとり気付くことがなかった。
あの状況の中、ニッコリと笑っていたサイに………
ターコ。それは右隣り
((………シカマル?))
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