◇夜空に謳う◇
8
朝早くに目が覚めて、二度寝する気にもなれず散歩でもすっかな…と寮の部屋を出てすぐだった。
目覚めは悪ぃ。朝一番に美波のクソムカつく面拝む。
って…どんだけ運が悪いんだよ俺は。
「…神夜の事を嗅ぎ回るのは、よせ」
「あぁ?ンでテメェに言われなきゃなんねーんだ」
コイツは、俺よりも佐野の事を知っている。
そう考えたら無性に腹が立った。
「…侑李に聴かなかったのか。
それが彼奴の…神夜の一番嫌う事だと」
「……」
─『…何も聞かん事。連絡先を聞かん事。とにかく、姫さんのプライベートは絶対に触れたらアカン』─
不意に侑李の言葉を思い出した。
けど、そんな事守ってたら俺は彼奴に一生近付けねぇ。
─俺はもう決めたんだ。
「俺は……。、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。
俺にはお前等の守ってるタブーっつの?そんなもん関係ねぇ」
やっと見つけたんだ。
もう見失わない。
だから──。
「…テメェ」
低く唸るような声色に美波の怒りが伝わる。
「お前が踏み込んで良い領域じゃねぇんだよ。
何も知らねぇ癖に神夜に近付くな…ッ」
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