◇夜空に謳う◇
2
「ンな睨むなや。チビってまうやろ」
嘘付け。
ヘラヘラ笑うコイツからは明らかに喧嘩慣れしてる雰囲気を感じた。
「自分、冬護と知り合いか?」
「…別に」
「彼奴、姫さん事になると周り見えへんからな」
…人の話聞けよ。
俺は『別に』って言っただろーが。
「あ、そーや。自分姫さんとも知り合いみたいやけど、どう云う関係なん?
あぁ、姫さん云うのは神夜の事やで?」
わざとらしく思い出した様に問われ、眉間に皺が寄る。
本当に聞きたい事はそっちだろうが。
「なぁ、どう云う関係?」
笑っているが、声は残酷な程冷たい。
「……知りたければ、俺の質問にも答えろ」
「ええよ」
ニヤリと口角を上げ、男は歩き出した。
「付いて来ぃ。姫さん居らんかったら此処に用はない」
一度振り返るとまた歩き出す。
俺は多少の不信感を抱きながらも、佐野の事が知りたいと云う感情のままに男の後を付けた。
連れられてやって来たのは路地裏の物静かなバー。
カウンターに座ると慣れた様子で注文をする。
「改めて、俺ユウリ。17歳高3や。宜しくしたってや」
「…嵯峨、時雨」
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