◇夜空に謳う◇
3
「ん…今帰ってるトコ」
『気を付けないといけないよ?神楽は可愛いからね』
「子供扱いしないでよ。それに、俺可愛くないからっ」
クスクスと聴こえた声に拗ねたように返す。
通話を終え少しだけ歩く速度を速めて、歩き慣れた夜道を進む。
アナタが居るあの暖かい場所へ。
無意識に歩く速度が速まる。
大切な大切な世界に一人だけの貴方。
俺の足は貴方のもとに向かうために付いてる。
俺の腕は貴方に触れる為だけに生えてる
俺の目は貴方を映す為だけに見えてる。
耳も、口も、貴方の声を聞いて応える為だけにある。
この躯も何もかも、
アノヒトの為だけに『存在』してる。
だから、アノヒト以外はいらない。
アノヒト以外、『俺』を知ってる人間はいらない。
お父さんと貴方だけが…世界で二人だけが…俺を認めてくれたんだ。
アノヒト以外はただの喋る人形。
俺にはアノヒトだけ居ればいい…。
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