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◇夜空に謳う◇



「待てよ…ッ!」


何なのだろう。
何で俺を引き留めるか、意味が分からない。


「何…やってんだよ、お前…ッ」


「……」


嵯峨が分からない。

何でそんな顔するの。


「何、って……見れば分かるだろ」

「…ッかんねぇよ!!」


絞り出す様な声で怒鳴る嵯峨が異質に見えた。


「………はぁ」

「神夜?」

「ごめん、陸。何か気分のらないや。明日埋め合わせするから、今日は俺帰る」


今日はセックスする気になれそうにない。


「うん。神夜がいいなら俺はいいよ」

「ありがと。明日俺から連絡するから」


陸に軽く触れるだけのキスをして俺は皆に背中を向けた。


「待っ…!」


引き留める嵯峨の声を無視して、俺はその場を離れた。










『俺』を知ってる人間は一人でいい…。

アノヒト以外『俺』のナカに入って来ないで…。










暫く歩いていると携帯が鳴りだした。

ディスプレイに表示された名前に頬が綻ぶ。


通話ボタンを押すと同時に聴こえるテノール。


『また夜遊びして…。
早く帰っておいで』


携帯の向こうから聴こえるのは俺の『大切な人』。


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