◇夜空に謳う◇
2
「待てよ…ッ!」
何なのだろう。
何で俺を引き留めるか、意味が分からない。
「何…やってんだよ、お前…ッ」
「……」
嵯峨が分からない。
何でそんな顔するの。
「何、って……見れば分かるだろ」
「…ッかんねぇよ!!」
絞り出す様な声で怒鳴る嵯峨が異質に見えた。
「………はぁ」
「神夜?」
「ごめん、陸。何か気分のらないや。明日埋め合わせするから、今日は俺帰る」
今日はセックスする気になれそうにない。
「うん。神夜がいいなら俺はいいよ」
「ありがと。明日俺から連絡するから」
陸に軽く触れるだけのキスをして俺は皆に背中を向けた。
「待っ…!」
引き留める嵯峨の声を無視して、俺はその場を離れた。
『俺』を知ってる人間は一人でいい…。
アノヒト以外『俺』のナカに入って来ないで…。
暫く歩いていると携帯が鳴りだした。
ディスプレイに表示された名前に頬が綻ぶ。
通話ボタンを押すと同時に聴こえるテノール。
『また夜遊びして…。
早く帰っておいで』
携帯の向こうから聴こえるのは俺の『大切な人』。
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