◆月の籠◆ 九 「……意外…」 現在、向かい合わせのソファーで雛を挟むように梓と寧が、そして向かいに透夜と悠真が座っている。 小さく呟いた雛に梓を除いた三人は「そうだろう」と首を縦に振った。 「確かにこいつの外見からは想像も出来ないだろうな」 190もある大の男が趣味が料理などと誰が思うだろう。 悠真がそう零すとその向かいで梓は口を尖らせ「それどういう意味?」と拗ねてしまった。 「梓の外見はどうあれ、美味しいですよ?ね、雛」 寧に同意を求められ雛は頷いた。 「…美味しい、よ…?」 ぶすくれている梓に向かって告げると、梓はあっさりと機嫌を直しはにかんだ。 「そーいや、今更なんだけど満剣は?」 不意に満剣の不在が気になったのか、透夜が問う。 「心は…急用で、今は校外に出てる」 「そっか」 それきり透夜は満剣の事を聞かなくなり、梓の弁当を摘み出す。 「雛、雛っ」 「…?」 横から梓に呼ばれ彼を見ると、ゴソゴソと重箱が入っていた風呂敷包みから何やら取り出した。 それは重箱とは違い紙で出来た箱で、梓はそれを雛の膝の上に「どうぞ」と置いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |