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◆月の籠◆




本心を言えば傍に居て欲しかったがそうも行かない。
いつも通り2時間ほどで戻ると言い、満剣は本家に向かった。
窓から満剣の後ろ姿を見送りながら、雛は空を眺める。


…雨がやめばいいのに。

雨が上がればいつものように…。


雨が降るせいか何時もより静寂に包まれている生徒会室が余計に心細さを煽る。


今は独りで居ると余計な事を考えそうで怖い。


「…そうだ」


はたと気付き、雛は電話を手に取る。

─こんな時だけ頼るのは卑怯だと解っていたが、それでも誰かを渇望していた。


数回の呼び出し音の後、回線が繋がる。


「──…ぁ…」
『…雛か?』


受話器越しに聞こえた声に、体から力が抜け崩れる様に膝をつく。


「透、夜…」


正直ほっとした。
自分でも驚くほど力が入っていたのか、彼の名を呼ぶ声が震えていた。


『…雛?』


異変を感じたのか透夜は訝し気に雛を呼んだ。


──来て欲しい。


そう言いかけて口を噤んだ。
また自分の弱さで人に迷惑を掛ける気か…と、もう一人の自分が問い掛ける。


先刻満剣に頼り、また同じ男である透夜達に頼ろうとしている…。



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あきゅろす。
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